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インボイス制度:適格簡易請求書の記載事項+記載例をわかりやすく

引き続き、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)についてです。

今回は、お仕事でちょっとご質問を頂いたので、適格簡易請求書のことを書きます。

0. この記事のポイント

適格「簡易」請求書とは、文字どおり、適格請求書の記載事項を簡易にしたもので、最も大きな違いは「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要である点です。適格簡易請求書の交付が認められるのは、例えば、小売業のように、不特定多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合です。

 

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1. 適格簡易請求書とは(2022年11月一部追加)

「適格簡易請求書」とは、文字どおり、適格請求書の記載事項を簡易化したものです。

詳細は後述しますが、適格請求書の記載事項のうち「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要とされているのが一番大きな差です。

(1) 対象事業

適格簡易請求書の交付が認められるのは、適格請求書発行事業者が、不特定多数の者に課税資産の譲渡等を行う場合で、具体的には、以下の事業を行っている場合とされています。

① 小売業
② 飲食店業
③ 写真業
④ 旅行業
⑤ タクシー業
⑥ 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限る)
⑦ その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

①小売業の例でいうと、スーパーマーケットを営む事業者が、適格簡易請求書の要件を満たすレシートを交付する感じです。

なお、2022年11月のQ&Aの改訂により、上記①から⑤までの事業については「不特定かつ多数の者に対するもの」との限定がないため、例えば、①小売業として行う課税資産の譲渡等は、その形態を問わず、適格簡易請求書を交付可能という点が明確化されました。

(2) 不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

上記(⑥と)⑦について、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」であるかどうかは、個々の事業の性質により判断します。

スーパーマーケットの例を思い浮かべるとわかりやすいですが、例えば、以下のような事業などについては、これに該当するイメージです。

  • 資産の譲渡等を行う者が、資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名または名称等を確認せず、
  • 取引条件等をあらかじめ提示して、相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
  • もう1つ、2022年11月のQ&Aの改訂により、以下のような事業も該当することが明記されています。

  • 事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、
  • 相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業
  • (ただし、取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる取引であることが常態である事業を除く)
  • なお、適格簡易請求書についても、その交付に代えて、その記載事項に係る電磁的記録を提供することができます。

    2. 現行制度と実質は変わらない

    現行制度でも、小売業などの事業で不特定多数の者に資産の譲渡等を行うものである場合には、特別な取扱いがあります。

    具体的には、(それを受け取った相手方で)仕入税額控除の際に、保存が必要な請求書等の記載事項について、「請求書等の交付を受ける相手方の氏名または名称」の記載が不要とされています。

    なので、その延長線上で適格簡易請求書の取扱いがあるってことですね。

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    3. 適格簡易請求書の記載事項

    次に、適格簡易請求書の記載事項について。

    前提として、(簡易じゃない)適格請求書の記載事項は以下の記事にまとめました。

     

    (1) 適格請求書と何が違うのか

    まず、適格簡易請求書の記載事項は、適格請求書とほとんど同じです。

    何が「簡易」かというと、適格請求書の記載事項との比較では、以下の2点です。

  • 「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要である点
  • 「税率ごとに区分した消費税額等」または「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる点
  • (2) 適格簡易請求書の具体的な記載事項

    わざわざ書く必要はないのですが、適格簡易請求書の具体的な記載事項は以下のとおりです。

    ① 適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号
    ② 課税資産の譲渡等を行った年月日
    ③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
    ④ 課税資産の譲渡等の税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
    ⑤ 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率(注)

    (注)「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。

    適格請求書の記載事項に含まれる「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」がないのが一番大きな差ですね。

    ちなみに、④と⑤は、下の記載例を見て頂いたほうがわかりやすいと思います。

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    4. 適格簡易請求書の記載例

    適格簡易請求書の記載例としては、Q&A(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A)のものがシンプルでいい感じです。

    小売業(スーパーマーケット)の例で、2パターンあります。

    ⑤で適用税率のみを記載するパターン

    まずは上記⑤で適用税率のみを記載するパターンです。

    (出典:国税庁 「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」 (令和3年7月改訂)問47)

     

    何か買ってるものがアメリカっぽいですね。歯磨き粉はColgateでしょうか(知らんけど)。

    ①~⑤は、上記の記載事項の①~⑤に対応しています。

    当たり前ですが、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」はありません。スーパーでレシートをもらって、自分の名前が書いてあったらビックリしますよね。

    ⑤で税率ごとに区分した消費税額等のみを記載するパターン

    もう1つは、上記⑤で税率ごとに区分した消費税額等のみを記載するパターンです。

    (出典:国税庁 「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」 (令和3年7月改訂)問47)

     

    今日はここまでです。

    では、では。

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    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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