電子帳簿保存法:2022年3月期における電子取引の取扱い
今日も電子帳簿保存法における電子取引の制度についてです。
今回は、3月決算の企業において、具体的に「いつから」改正後の電子帳簿保存法に基づく電子取引の保存を行う必要があるかを考えたいと思います。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 問題の所在=改正後の電子帳簿保存法の施行日
令和3年度税制改正における電子帳簿保存法の改正の施行日は2022年(令和4年)1月1日です。
したがって、同日以後に行う電子取引の取引情報については、改正後の要件(以下の記事をご覧ください)に従って保存を行う必要があります。
ということは、3月決算の企業では、施行日が期中になります。
具体的には、改正後の電子帳簿保存法の施行日である2022年1月1日が、2022年3月期(2021年4月1日から2022年3月31日まで)の事業年度(課税期間)の途中に入っているということです。
2. あくまでも2022年1月1日以後に「行う」電子取引が対象
この場合、「事業年度単位で」みたいな特別な取扱いは存在しません。
事業年度の途中であっても、2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存する必要があります。
したがって、2022年3月期においては、同一事業年度内に行う電子取引の取引情報であっても、「2021年12月31日までに行う電子取引」と「2022年1月1日以後行う電子取引」とで、求められる保存要件が異なることになります。
めんどくさ。
3. 取引タイミングと保存タイミング(2022年3月期)
このテーマに関連するものとして、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】におもしろい「問い」があります。
すなわち、3月決算の企業で、「令和4年(2022年)1月1日以後に保存を行えば、同日前に行った電子取引の取引情報について、令和3年度の税制改正後の保存要件に従って保存することは認められますか」というものです。
つまり、改正後の電子帳簿保存法の施行日「前」に行われた電子取引について、同日「後」であれば、改正後の保存方法によって保存することができるか、という疑問です。
これに対する回答は、「不可」です。
具体的には、「令和4年(2022年)1月1日前に行った電子取引の取引情報については、改正後の保存要件により保存することは認められません」ということで、当然なんですけど、何となく冷たい回答です。
というのも、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度に関する改正は、「施行日以後に行う電子取引」の取引情報について適用することとされているためです。
まあ、一問一答も多くなってきて、答えるのもめんどくさいんでしょうね(推測)。
4. 2021年12月31日以前に行った電子取引の取扱い
したがって、令和4年(2022年)1月1日よりも前に行った電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、改正後の保存要件により保存することは認められません。
つまり、その電磁的記録について、改正前の保存要件を満たせない場合(たぶん多くの企業で満たしていない)、その電磁的記録を出力した書面等を保存する必要があります。
でも、令和4年(2022年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、出力した書面等を保存するのはNGだと。
めんどくさ。
5. 宥恕規定(2022年7月追記)
2022年(令和4年)1月1日から2023年(令和5年)12月31日までの2年間に行う電子取引については、所轄税務署長が要件を満たす形でデータ保存できなかったことに「やむを得ない事情」があると認め、かつ、納税者が出力書面を保存している場合には、それでOKみたいな感じになっています(宥恕規定。詳細はこちら)。
実質的には2年間の適用延期と考えてもいいんじゃないかと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。