消費税:現⾏の区分記載請求書等保存⽅式における電子取引の取扱い
今日はちょっと「おまけ」です。
Table of Contents
1. 前回はインボイス制度(適格請求書等保存方式)における電子取引の取扱い
前回は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の下で、適格請求書に係る電磁的記録の提供を受けた場合の取扱いを確認しました。取引先から請求書等を電子データで提供してもらった場合にどうするか、というお話です。
2. 区分記載請求書等保存⽅式における電子取引の取扱い
インボイス制度が適用されるのはまだ先なので、今回は、現行制度(区分記載請求書等保存⽅式)の下で、請求書等を電子データで提供してもらった場合の取扱いを確認します。
まず、インボイス制度とは異なり、現行制度上は、電子取引により請求書等のデータを受領した場合の取扱いに関する規定は特にないものと思われます。
ただ、国税庁のウェブサイトに以下の質疑応答事例があります。
インターネットを通じて取引を行った場合の仕入税額控除の適用について
(↑ 国税庁のウェブサイトへのリンクです)
抜粋すると、以下のような感じです。
【照会要旨】
当社は小売業を営む法人ですが、商品の発注は全てインターネットを通じて行っていることから、取引先から請求書等の書類の交付が受けられず、取引の請求内容等については電子データによる保存があるのみです。
このような場合、請求書等の交付を受けなかったことについてやむを得ない理由があったとして、仕入税額控除の適用を受けることはできるでしょうか。
【回答要旨】
(中略)
照会のようにインターネットを通じて取引を行った場合には、請求書等に記載されるべき法定事項が通信回線を介してコンピュータ間で電子データとして交換されるため、請求書等そのものが作成・交付されないこととなり、当該電子データ以外の保存が行えない状況となりますが、これは、請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合に該当するものと考えられます(基通11-6-3(5))。
したがって、帳簿に記載すべき事項に加えて、インターネットを通じた取引による課税仕入れであること及び課税仕入れの相手方の住所又は所在地を記載して保存する場合には、仕入税額控除の適用を受けることができます。
(下線は追加。出典は国税庁ウェブサイト(上記リンク))
以下、少し整理してご説明します。
3. 現行制度における請求書等の保存の要件(2つの特例的な取扱い)
現行制度上、仕入税額控除の適用を受けるための請求書等の保存の要件については、2つの特例的な取扱いがあります。
1つ目の特例的な取扱いとして、税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよいこととされています。これは今回のケースには直接関係しません。
2つ目の特例的な取扱いとして、税込みの支払額が30,000円以上であっても、請求書等の交付を受けなかったことにつき「やむを得ない理由」がある場合には、請求書等の保存がなくても仕入税額控除が可能です。この場合には、法定事項を記載した帳簿に以下を記載しなければならないこととされています。
上記の質疑応答事例が使っているのは、この2つ目の特例です。
4. 電子取引は「やむを得ない理由」
上記の質疑応答事例に沿って考えると、電⼦取引により請求書等のデータを受領した場合で、それを電子帳簿保存法の電⼦取引制度に従う形で保存しているときには、上記の特例的な取扱いのうち、「やむを得ない理由」に該当するものと考えられます。
「請求書等そのものが作成・交付されない」→「やむを得ない」という流れなので、書面に出力した請求書等を保存する必要もありません(たぶん)。
したがって、通常の帳簿の記載事項に加えて、「やむを得ない理由」と「相手方の住所または所在地」を記載して保存しておけば、それにより仕入税額控除の適用を受けることができることになります。
5. 電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】
ちなみに、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】においては、現行制度とインボイス制度を対比する形で解説されています。
要約すると、以下のような感じです。
【現行制度(区分記載請求書等保存⽅式)】
【インボイス制度(適格請求書等保存方式)】
必要な情報だけを抜き出すと、電子帳簿保存法上問題ない形で電子データを保存できている前提であれば、インボイス制度が入ることで、帳簿に「やむを得ない理由」と「相手方の住所または所在地」を書かなくてよくなるということだと思います(たぶん)。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。