インボイス制度:口座振替等で契約書を基礎に仕入税額控除を行う場合
前回に引き続き、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)についてです。
今回も、仕入側の視点で、仕入税額控除のお話です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 口座振替での家賃支払い等、請求書等をやり取りしない場合
インボイス制度の下では、原則として、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされています。
一方で、実務では、口座振替での家賃支払いなど、必ずしも請求書等をやり取りしないケースがあります。このとき、インボイス制度の下では、仕入税額控除はどうなるのでしょうか?
あ、ちなみに、今回のお話は、別に家賃支払いに限ったことではなく、専門家への定額報酬の支払いなど、都度請求書等が交付されない取引についても同じことです。なので、かなり汎用性のあるお話であることを最初にお伝えしておきます。
2. Q&Aで取り扱っているケース(前提条件)
このようなケースでの仕入税額控除については、Q&A(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A)に解説があります。
具体的には、口座振替で支払いを行う賃借料(家賃)について、月々の請求書や領収書の交付を受けていない場合の取扱いですが、詳細な前提条件は以下のとおりです。
ごく一般的なケースだと思いますが、このような場合、請求書等の保存要件を満たして、仕入税額控除を取るためには、どのような対応が必要でしょうか?
3. 一定期間の賃借料についてまとめて請求書の交付を受ける場合
まず、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
つまり、家賃の支払いのように、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、この点は同じだということです。
Q&Aでは、「相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存する」という対応が挙げられています。
適格請求書については、取引の都度ではなく、一定期間の取引をまとめて交付することもできるためです。
4. 契約書と通帳のセットを適格請求書とする場合
上記のように、ある程度の期間をまとめてなら、適格請求書の交付を受けることはできるかもしれません。
ただ、もう少し効率的にやるのであれば、複数の書類を組み合わせることが考えられます。
すなわち、適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たす形でもOKです(この点については、以下の記事をご参照ください)。
端的には、このケースでは、契約書をベースに他の書類を組み合わせます。
具体的には、Q&Aでは、「適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存する」という対応が挙げられています。
5. 契約書を作成し直す必要があるのか(2022年9月一部追記)
ただ、これは契約書に、「課税資産の譲渡等の年⽉⽇以外の事項」が網羅的に記載されていることが前提になります。過去に作成された契約書では、「登録番号」は記載されていないでしょうし、ひょっとしたら「税率」や「税額」についても記載がないケースがあるかもしれません。
Q&Aには、「令和5年9月30日以前からの契約について」という位置付けで、この点についても言及があります。
そこでは、登録番号など、契約書に(適格請求書として)必要な事項の記載が不足している場合、契約書を作成し直すことまでは求められていません。すなわち、別途、不足する記載事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えないこととされています。
もちろん、契約書を作成し直す形でもOKだと思います。ただ、やり取りの手間や印紙等のコストを考えると、登録番号などを別途通知するほうが現実的でしょうね。
ちなみに、通帳など無しで、契約書だけで済ますのはちょっと難しそうです(以下の記事をご参照ください)。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。