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インボイス制度:適格請求書の交付義務と「求めに応じて」の意味合い

前回に引き続き、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)についてです。

今回は、売上側の立場で、適格請求書の交付義務について書きたいと思います。

0. この記事のポイント

適格請求書発行事業者には、基本的に適格請求書の交付義務が課されています(課税取引について)。例外的に交付義務が免除される取引もありますが(3万円未満の公共交通機関による旅客の運送など)、これはどちらかというと、自社が仕入側の場合に、仕入税額控除の要件を検討する局面で見かけることが多いものです。

 

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1. 適格請求書の交付義務が課される場合

早速ですが、インボイス制度の下では、適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、課税事業者である相手方からの求めに応じて、適格請求書を交付する義務が課されています(適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することも可能)。

「国内において課税資産の譲渡等を行った場合」なので、逆にいうと、免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行っている場合は、適格請求書の交付義務はありません。

また、「課税事業者である相手方からの求めに応じて」ということで、消費者や免税事業者に対する交付義務もありません。 

2. 引っ掛かった表現

私がずっと引っ掛かっていたのは、「求めに応じて」という表現です。

引っ掛かったら自分でちゃんと調べればいいのですが、先日税理士の人と話しているときに、「税務通信で主税局(=財務省主税局です)の人が解説してて、それがわかりやすいよ」と教えてもらいました。3650号です。

詳細にはその記事をご覧頂ければと思いますが、私の引っ掛かりを解消してくれたのは、以下の2点です。

(1) 交付の求めがなくても、適格請求書を交付してよい
(2) 逆に、求められたときにだけ適格請求書を交付するのもOK

上記(2)については、記事では「⼩規模な⼩売店」の例で説明されています。普段は簡素なレシートをお客さんに渡しているものの、事業者っぽいお客さんから「領収書をください」と⾔われた場合にだけ、⼿書きの領収書に適格請求書としての必要事項を記載して交付するような対応がイメージされているようです。

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3. 適格請求書の交付義務が免除される取引

一方で、適格請求書の交付義務が免除される取引もあります。

これは端的には、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な取引であり、具体的には以下の取引が該当します。

  1. 3万円未満の公共交通機関(船舶、バスまたは鉄道)による旅客の運送
  2. 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る)
  3. 生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る)
  4. 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
  5. 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)

「いや、うちバス会社でも鉄道会社じゃないし」と思われるかもしれませんが、これを知っておくとよいのは、売手の側で適格請求書の交付義務が免除される取引については、適格請求書等保存方式の下でも、仕入税額控除に際して請求書の保存が求められない(一定の事項を記載した帳簿のみの保存で足りる)からです。

要は、売上側の視点で「適格請求書を交付しなくてよい」と読むのではなく、仕入側の視点で「適格請求書をもらわなくてよい」と読むとよい、ということです。これについては、また別の機会に。

今日はここまでです。

では、では。

■インボイス制度に関する記事の一覧はこちら

 

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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