第2回 損益計算書の段階損益:粗利→営業利益→経常利益
「そこそこわかりやすい財務諸表」シリーズの損益計算書編、第2回です。
前回は「損益計算書とは?」というところを確認して、損益計算書の大まかな確認方法をお伝えしている途中でした。
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0. この記事のポイント
1. 今回は段階損益です
で、その中で「営業損益」というお話をしたのですが、そもそも損益計算書の段階損益については、まだお話してなかったですよね。
あ、段階損益というのは、営業損益みたいに、最終損益にたどり着く前にいくつか出てる損益です。
今回も、前回と同じく以下の損益計算書を使います(架空のものです)。
前回お伝えしたのは、「まず売上高と最終損益を見ましょう。で、もう1つ言うなら、営業損益を見ましょう。」ということでした。
2. 実際の損益計算書で段階損益を見てみる
上記の損益計算書で、他にどんな段階損益があるかについてまとめると、以下のような感じです。例によって、見やすいように億円単位に直してあります。
ちょっとややこしくなってきましたね。ただ、重要なのは、あくまでも「売上高→営業損益→最終損益」の部分で、その間にいくつか段階損益が挟まっているイメージで大丈夫です。
3. それぞれの段階損益のイメージ
それぞれの段階損益のイメージですけど、だいたい以下のような感じで理解して頂ければいいと思います。
売上から売上原価を引いた最も基本的な利益で、製品の競争力を示す
営業利益:
通常の営業活動から生じた利益で、本業の収益力を示す
経常利益:
金融収益・費用まで加味した利益で、経常的な収益力を示す
税引前当期純利益:
臨時的な損益まで加味した利益で、税金費用を除く全ての損益が反映されている
当期純利益:
税金費用まで加味した最終利益で、総合的な収益力を示す
これを図にまとめると、以下のようになります。
ちなみに、この図と同じようなものを、『貸借対照表だけで会社の中身が8割わかる』という本を書きました。2012年のことですけど、結構反響があって、最近書いた『この取引でB/S・P/Lはどう動く? 財務数値への影響がわかるケース100』にも同じようなものを書きました。
こういう図は、なかなか見る気がしないと思うんですけど、ちゃんと見て頂くと、結構わかりやすい図のはずです(と強気に言ってみる)。
4. 段階損益の間に挟まっているもの
見て頂きたいのは、それぞれの段階損益の間に何が挟まっているかです。
- 売上からスタートすると、
- そこから「売上原価」を引いて、売上総利益が出ます(いわゆる「粗利」です)。
- そこから「販売費及び一般管理費」を引くと、営業利益です。重要です。
- で、「営業外収益」を足して、「営業外費用」を引くと、今度は経常利益です。昔から日本企業は好きですよね。
- これに「特別利益」を足して、「特別損失」を引くと、税引前当期純利益になります。
- 最後は「税金費用」を引いて、税引後の当期純利益です。これが最終損益です。
これを前提に上記の損益計算書(の段階損益の要約)を見ると、この企業、営業利益から税引前利益まで、水準はほぼ一緒です。だから、たぶん営業利益までをきっちり見ればよくて、その他の営業外損益とか特別損益とかは、「何があるのかな?」という軽い感じで見てもいいかもしれません。
今日はここまでです。次回は、売上高から営業損益までに焦点を当てて見ていきます。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。