適格請求書発行事業者からインボイス以外を受領した場合の経過措置の適用可否
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、ここ数か月の議論のアップデートです。
今回のテーマは、適格請求書発行事業者から適格請求書「以外」を受領した場合の経過措置の適用可否です。
Table of Contents
1. 適格請求書発行事業者から適格請求書「以外」を受領した場合
税務通信(3758号)の記事では、「適格請求書発行事業者から適格請求書に相当しない請求書(区分記載請求書の記載事項が記載されたもの)を受け取った場合に、経過措置(8割控除など)の適用を受けられるかどうか」という質問が紹介されています。
これについては、財務省の方が「受けられます」と回答しています。
2. 平成28年改正法附則第52条
経過措置自体は、平成28年改正法附則第52条に書いてあるので、それを読めばいいだけです。
第1項の大枠は以下のような感じです。
(適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置)
第五十二条 事業者…が、五年施行日から五年施行日以後三年を経過する日…までの間に国内において行った課税仕入れ(新消費税法第三十条第一項の規定の適用を受けるものを除く…)のうち、五年改正規定による改正前の消費税法…第三十条の規定がなお効力を有するものとしたならば同条第一項の規定の適用を受けるものについては、同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録…を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし、かつ、当該課税仕入れに係る支払対価の額…に百十分の七・八…を乗じて算出した金額に百分の八十を乗じて算出した金額を新消費税法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とみなして、同条の規定を適用する。…
見出しには「適格請求書発行事業者以外の者から行った」とあって、答えが書いてある気もするのですが、これは引っ掛け(?)だそうです(笑)
つまり、本文を読む必要があるということです(そりゃそうか)。
本文のほうには、「適格請求書発行事業者以外」みたいな要件はないので、「適格請求書発行事業者が発行した、適格請求書の要件を満たさない区分記載請求書」の交付を受けた場合にも、経過措置の適用を受けられるということです。
3. 取り直しがめんどくさい?
もちろん、税務通信の記事でも、「適格請求書発行事業者には、修正インボイスを含めて交付義務があるので、ちゃんとしたインボイスの交付を求めるべき」みたいなことが書いてあります。
でも、実際には取り直すのがめんどくさいこともあると思います。消費税等の2割(の税引後)の負担で済むなら、取り直しに要する社内人件費とのバランスは考えたほうがよいかもしれません。
なので、個人的には選択肢としてアリだと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。