インボイス制度:令和5年10月1日をまたぐ役務提供を受けた場合の仕入税額控除
引き続き、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のお話です。
今日は、昨日の話題の関連で、令和5年10月1日をまたぐ役務提供を受けた場合の仕入税額控除について。
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1. インボイスの交付対象時期(売上側)
売上側の視点では、役務提供(サービスの提供)で、物の引渡しを要しない場合、「その約した役務の全部を完了した日」が10月1日以降になる場合、インボイスの交付義務が生じます。
資産の譲渡等があったタイミングで消費税の納税義務が成立するから、ということなんだと思います。
2. 仕入税額控除を適用する際の対応(仕入側)
これを仕入側の視点で考えると、役務提供が2023年10月1日をまたいでいた場合、同日以後に役務提供が完了したものについてインボイス制度対応が必要です。
適格請求書発行事業者からの課税仕入れであれば、あまり問題になりませんが、それ以外(免税事業者など)からの課税仕入れの場合、仕入税額控除にあたり、タイミングによっては、経過措置を適用するかどうかを検討する必要があります。
3. 具体例
この点、税務通信(3759号)にわかりやすい具体例が挙げられています。
仕入側の視点で、外注費に係る仕入税額控除を考えるものですが、まず、前提条件は以下のとおりです。
- 免税事業者に対して外注を行う
- 役務提供期間は2023年9月21日から10月20日まで(10月1日をまたぐ)
- つまり、役務提供の完了日は10月20日
- 役務提供の対価として、外注費220を10月20日に支払う
- この支払いは短期前払費用に該当しない
この場合、キーになるのは、「役務提供の完了日=2023年10月20日」です。
すなわち、これが10月1日以後であるため、インボイス制度対応が必要になり、具体的には、免税事業者からの課税仕入れなので、経過措置を適用することになります。
つまり、この場合、仕入税額相当額20×80%=16が仕入税額控除の対象となります。
この例のポイントとしては、インボイス制度開始前の期間(2023年9月21日から9月30日まで)に係る外注費が含まれているものの、仕入税額控除の適用にあたっては、あくまでも役務提供の完了日で判断するため、それが10月1日以後であるとして、外注費の全額を経過措置の対象にするというところかと思います。
こういうの、ほんとめんどくさいなと思います。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。