1. HOME
  2. ブログ
  3. 会計
  4. 会計一般
  5. 会計上の見積りの変更といえば資産除去債務

BLOG

佐和周のブログ

会計一般

会計上の見積りの変更といえば資産除去債務

今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。

色々とあって、会計基準を見返しているところです。

 

1. 会計上の見積りの変更といえば資産除去債務

会計上の見積りの変更といえば、資産除去債務というくらい、資産除去債務の関係は会計上の見積りの変更が多いです。

店舗の賃貸借契約に基づく原状回復義務なんかは、継続的に原状回復工事の実績が入ってくるので、それに基づいて見直す感じでしょうか(例えば、以下のような注記はよく見かけます)。

(会計上の見積りの変更)
(資産除去債務)
店舗等の不動産賃貸借契約に基づく原状回復義務として計上していた資産除去債務について、直近の原状回復費用実績等の新たな情報の入手に伴い、見積額の変更を行っております。見積りの変更による増加額XXX千円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。

スポンサーリンク

 

2. 割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更

上記の注記にも記載がありますが、割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合、見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します。

言い換えると、資産除去債務の見積りの変更から生じる調整について、減価償却を通じて残存耐用年数にわたり費用配分を行うという考え方で、この方法は「プロスペクティブ・アプローチ」と呼ばれます。

耐用年数の変更について、影響額を変更後の残存耐用年数で処理するのと同じ感じです。

なお、これまで合理的に見積ることができなかった資産除去債務の金額を合理的に見積ることができるようになった場合についても、上記の将来キャッシュ・フローの見積りの変更と同様に処理することとされています。

例えば、以下のようなケースです(あんまりメジャーな注記ではないと思いますが)。

(会計上の見積りの変更)
 (資産除去債務の見積りの変更) 
 当社は、賃貸契約に基づき使用するオフィスについては、退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、当該債務に関する賃借資産の使用期限が明確ではなく、移転等も予定されていなかったことから、資産除去債務を合理的に見積ることができず、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりませんでした。
 当連結会計年度において、●●本社の大規模リニューアル等の際に検討を行ったことに伴い、賃借資産の使用期限及び原状回復義務の履行時期を合理的に見積ることが可能となったため、資産除去債務をXXX千円計上しております。
 なお、当該見積りの変更は、当連結会計年度末に行ったため当連結会計年度の損益に与える影響はありません。

スポンサーリンク

 

(会計上の見積りの変更)
(資産除去債務の見積りの変更)
 当社は、賃貸契約に基づき使用するオフィスについては、退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、当該債務に関する賃借資産の使用期限が明確ではなく、移転等も予定されていなかったことから、資産除去債務を合理的に見積ることができず、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりませんでした。
 当連結会計年度において、リモートワークなど多様な働き方に対応するため営業手法を見直したことから賃借している本社オフィスの一部を解約することを決定いたしました。また、当社及び海外連結子会社を含めた全社員の働き方に対応するため、賃借している本社及び海外連結子会社のオフィスについても見直しを行いました。これに伴い、退去等の新たな情報を入手し、退去時に必要とされる原状回復費用、賃貸契約の期限及び原状回復義務の履行時期に関して見積りの変更を行いました。この見積りの変更により、資産除去債務をXXX千円計上し、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれXXX千円減少しております。

ちなみに、このような場合、資産に係る将来キャッシュ・フローに関する不利な予想が明確になったということで、会計基準では、減損の兆候として扱うべきとされています。

スポンサーリンク

 

3. 割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更による調整額に適用する割引率

割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合、適用する割引率はそれぞれ以下のとおりです。

(1) キャッシュ・フローが増加する場合
その時点の割引率

(2) キャッシュ・フローが減少する場合
負債計上時の割引率

なお、過去に割引前の将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用することとされています。

まあ理屈は分かります。

スポンサーリンク

 

4. よくわからないケース

ちなみに、単純に割引前将来キャッシュ・フローの金額が変更になるだけでなく、除去の時期が変更になった場合の割引率はどうしてよいのかよくわかりません(理論的にどうやるのが正しいかわからないという意味です)。

単純にキャッシュ・フローが増減するだけなら、上記のとおり、増加・減少で場合分けすればいいですが、期間が変更になれば当然割引率の算定基礎も変更になるので。

具体的には、オフィスの移転時期の決定などにより、資産除去債務の見積りの変更が有形固定資産の耐用年数の見積りの変更とセットになっているようなケースです(例えば、以下)。

(会計上の見積りの変更)
当連結会計年度において、本社の移転時期を決定したため、移転後利用見込のない固定資産について耐用年数を短縮し、将来にわたり変更しております。また同様に、本社オフィスの不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務として計上していた資産除去債務について、移転予定日までの期間で資産除去債務の費用計上が完了するように変更しております。なお、この変更による当連結会計年度の損益に与える影響は軽微であります。

まあ、資産除去債務はわからないことだらけなので、別にこれだけを抜き出して気にしても仕方ないんですけど。

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

関連記事

佐和周のブログ|記事一覧

スポンサーリンク