資産除去債務の算定:①概要
今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。
色々とあって、会計基準を見返しているところです。
Table of Contents
1. 資産除去債務の計算要素
資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定します。
つまり、資産除去債務の計算要素としては、以下の2つがあります。
- 有形固定資産の除去に要する(割引前の)将来キャッシュ・フロー
- 割引率
2. 割引前の将来キャッシュ・フロー
上記の計算要素のうち、割引前の将来キャッシュ・フローは、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づく自己の支出見積りによります。
資産除去債務の算定における割引前将来キャッシュ・フローについては、理屈として、「市場の評価を反映した金額によるという考え方」と「自己の支出見積りによるという考え方」がありますが、資産除去債務に関する会計基準においては、後者の考え方が採用されているということです。
また、その見積金額は、「生起する可能性の最も高い単一の金額」または「生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で加重平均した金額」とされています。
さらに、将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、処分に至るまでの支出(例えば、保管や管理のための支出)も含まれます。
3. 割引率
一方、上記の計算要素のうち、割引率としては、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率を用います。
割引率についても、理屈として、無リスクの割引率を用いる場合と無リスクの割引率に信用リスクを調整したものを用いる場合が考えられますが、資産除去債務に関する会計基準においては、前者の考え方が採用されているということです。
さっぱり言うと、割引前の将来キャッシュ・フローに信用リスクによる加算が含まれていない以上(あくまでも自己の支出見積りなので)、割引率も無リスクの割引率とすることが整合的ということなんでしょうか(実際にはもっと複雑な話みたいですけど)。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。