インボイス制度:JRの乗車券・特急券の取扱い(新幹線のEX予約も)
今週は、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書いてます。
ちょっと調べ物をしたので、そのついでにブログにも。
Table of Contents
1. 調べ物
調べ物をしてたのは、定期券の払い戻しの話です。一方で海外子会社ののれんの減損とか対応しながら、他方でこういうレベルの疑問にもちゃんと対応している経理の人は本当にすごいなと思います。
前置きはこれくらいにして、この調べ物をしている過程で、すごくいい記事を見つけました。税務通信(3746号)のJR東日本への取材記事です。私自身がそもそも電車に詳しくないこともあり、100%理解できた気はしませんが、それでもめちゃくちゃ参考になりました。
以下でちょっとご紹介しますが、ぜひ実際の記事をご覧ください。
2. 予備知識
とりあえず、この記事を読む前の私の予備知識は以下のとおりです。
- 鉄道料金(乗車券や特急券)は、1回の取引の税込価額が3万円未満なら、公共交通機関特例があるので、インボイスは不要(帳簿保存のみで仕入税額控除可)
- 一方、それが3万円以上になる場合(新幹線を利用する場合など)は、インボイスが必要
- ただし、従業員の出張旅費等に含まれるもの(従業員との間で精算するもの)は、3万円以上でもインボイス不要(帳簿保存のみで仕入税額控除可)
以下では、3万円以上で公共交通機関特例が使えず、かつ、従業員の出張旅費等にも含まれない(または従業員との間で精算しない)など、インボイスの保存が必要な状況を前提に、鉄道料金の関係で求められる対応をさっぱりと書きます。
3. 自動券売機等での乗車券・特急券の購入
まず、乗車券や特急券を自動券売機等で購入する場合、その金額にかかわらず、その自動券売機等や有人窓口(みどりの窓口など)において、利用者の求めに応じてインボイス(適格簡易請求書)の要件を満たす領収書を交付するそうです(ちょっとよくわからないところがあったので、税務通信の記事自体をご参照ください)。
窓口で購入する場合は、普通に領収書をもらえばいいんでしょうね。
4. えきねっと/EX予約・スマートEXでの購入
次に、えきねっと(新幹線や特急列車の席をインターネットで予約するやつ)については、ログイン後の「マイページ」から領収書データを適格簡易請求書として交付しているそうです(あんまり使わないので、知らなかったです)。
また、エクスプレス予約・スマートEXについても、同じくウェブサイトからダウンロードできるとのこと。これだけはJR東海に取材したそうです。マメやなあ。
5. 入場券、手回り品切符の購入
もう1つ、マイナーなお話かもしれませんが、入場券や手回り品切符の購入について。
前提として、入場料金や手回品料金などは公共交通機関特例の対象外です(公共交通機関特例は、旅客の運送に直接的に附帯しない対価には適用されないので。詳細はこちら)。
なので、これらについては、インボイス制度への対応が必要で、具体的には、以下のような対応になるようです。
自動券売機で適格簡易請求書(領収書)を交付
(2) ICカード(Suica)を利用して入場する場合
利用者の求めに応じて有人窓口(改札・みどりの窓口)で適格簡易請求書を交付
(3) 手回り品切符を購入する場合
利用者の求めに応じて有人窓口(改札)で適格簡易請求書を交付
6. 乗車券・特急券の払戻し
最後におまけですが、利用開始前の乗車券や特急券の払戻しは、売上に係る対価の返還等に該当しないそうです。
なので、基本的に適格返還請求書は交付されないということで。
ただし、払戻手数料に関するインボイスの交付には対応するとのこと。
こんなことまで取材してすごいなあと思います。
7. インボイスに関するお問い合わせには対応できません
何度も書いた気がしますが、インボイス制度は私の専門ではなく、クライアントにおまけで対応しているだけです。なので、インボイス関係の(新規の)お問い合わせを頂いても対応できません。
「じゃあ、ブログに書くなよ」ということなのですが、一方で、本業に関することは書くのを憚られる面もありまして。。。
ということで、今日はここまでです。
では、では。
↓インボイス制度に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。制度開始後の6訂版です。「決定版」らしいです。3訂版の紹介記事はこちら)。
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これだけは押さえておこう 海外取引の経理実務 ケース50〈第3版〉(Amazon)
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。