インボイス制度:ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の取扱い
今週は、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書いています。
今回は、インボイス制度におけるリース取引の取扱いについて。
Table of Contents
1. リース事業協会のパンフレット
インボイス制度におけるリース取引の取扱いについては、税務通信(3747号)にも記事がありますが、公益社団法人リース事業協会のパンフレット(「リース取引のインボイス(2023年3月)」)が見やすいです(内容的には税務通信と同じです)。
リンクはトップページと指定されているので、そのリンクを貼っておきますが、ページ真ん中くらいにパンフレットへのリンクがあります。
ということで、今日はその内容について少しだけ書きます(明日のQ&Aに関係するので)。
まず、インボイス制度の下では、リース料について仕入税額控除を行う場合、リース会社から交付されるインボイスの保存が必要です(当たり前ですが)。なので、パンフレットでは、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分けて、インボイス制度に関する対応をまとめています。
2. ファイナンス・リースとオペレーティング・リース
前提となる知識として、リース取引に関する消費税法上の取扱いについては、以下の記事をご参照ください(これはあくまでも税務の話であって、会計の話ではありません)。
オペレーティング・リースのほうはいいとして、ファイナンス・リースのほうは少し考えることがあります。
具体的には、法人税法上で売買があったものとされるリース取引については、消費税法上も、そのリース取引の目的となる資産の引渡しの時に資産の譲渡があったものとして取り扱われます。
また、賃借人の側では、リース資産の取得時に、リース料総額を仕入税額控除の対象とする処理が原則になるものの(いわゆる「一括控除」)、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、例外的に支払リース料をその都度仕入税額控除の対象とする処理も認められます(いわゆる「分割控除」)。
ということで、以下、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分けて見ていきます。
3. ファイナンス・リース取引
ファイナンス・リース(法人税法上、売買扱い)のリース料に関する取扱いについて、パンフレットの内容を大まかに要約すると、以下のとおりです。
(2) 令和5年9月30日(=インボイス制度の開始前日)までにリースを開始した場合、10月1日以降に支払うリース料(に係る仕入税額控除)についても、インボイスは不要(分割控除でも)
この場合のインボイスの例としては、リース料の支払明細書や請求書等が挙げられています。
また、(2)については、平成28年改正法附則50②の規定に基づくものとされています。
ちなみに、借手側が賃貸借処理した場合(分割控除の場合)の取扱いは明日書きます。
4. オペレーティング・リース
一方、オペレーティング・リース(税務上、賃貸借扱い)のリース料(に係る仕入税額控除)について、パンフレットでは、令和5年9月30日までにリースを開始した取引であっても、10月1日以降に支払うリース料に対しては、インボイスが必要としています。
5. リース取引に係る対応まとめ
ややこしい部分だけまとめると、リース料に係る仕入税額控除の取扱いは以下のとおりです。
ファイナンス・リースであっても、オペレーティング・リースであっても、インボイスが必要
(2) 9月30日までに開始するリース取引
①ファイナンス・リース
10月1日以降のリース料について、インボイスは不要(分割控除でも)
②オペレーティング・リース
10月1日以降のリース料について、インボイスが必要
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。