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開示府令等の改正:サステナビリティ情報の開示における考え方&望ましい開示に向けた取組み

今週は、開示府令等の改正(2023年1月)について書いています。

今回は、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」のうち「サステナビリティ情報の開示における考え方及び望ましい開示に向けた取組み」について。

 

1. サステナビリティ情報の開示における考え方および望ましい開示に向けた取組み

今回の開示府令等の改正は、WG報告における提言(「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」や「コーポレートガバナンスに関する開示」などに関する制度の整備を行うべきとの提言)を受けたものです。

WG報告では、サステナビリティ情報の開示についての期待等が提言されていますが、それを踏まえる形で「記述情報の開示に関する原則」が改正され、開示における考え方及び望ましい開示に向けた取組みが反映されています。

「記述情報の開示に関する原則」というのは、記述情報(財務情報以外の開示情報)について、開示の考え方、望ましい開示の内容や取り組み方をまとめたものです。

2. 前提:「サステナビリティ」とは

前提として、「サステナビリティ」に明確な定義があるわけではありませんが、例えば、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードでは「ESG要素を含む中長期的な持続可能性」とされています。

また、「サステナビリティ情報」には、例えば、以下に関する事項が含まれ得るとされています(国際的な議論を踏まえて)。

環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなど

以下では、サステナビリティ情報の開示における「考え方」と「望ましい開示」のそれぞれの主な内容について、簡単に確認します。

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3. サステナビリティ情報の開示における考え方

サステナビリティ情報の開示における「考え方」の主な内容は以下のとおりです。

  • サステナビリティに関する考え方及び取組は、企業の中長期的な持続可能性に関する事項について、経営方針・経営戦略等との整合性を意識して説明するもの
  • 「ガバナンス」と「リスク管理」は、企業において、自社の業態や経営環境、企業価値への影響等を踏まえ、サステナビリティ情報を認識し、その重要性を判断する枠組みが必要となる観点から、すべての企業が開示することが求められる
  • 「戦略」と「指標及び目標」は、開示が望ましいものの、各企業が「ガバナンス」と「リスク管理」の枠組みを通じて重要性を判断して開示することが求められる

4. 望ましい開示(に向けた取組み)

一方、サステナビリティ情報の開示における「望ましい開示(に向けた取組み)」の主な内容は以下のとおりです(WG報告の内容を含みます)。

  • 企業が、業態や経営環境等を踏まえ、重要であると判断した具体的なサステナビリティ情報について、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4つの構成要素に基づき開示することが求められている
    • 企業が、気候変動対応が重要であると判断する場合には、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の枠で開示すべき
    • 温室効果ガス(GHG)排出量に関しては、投資家と企業の建設的な対話に資する有効な指標となっている状況に鑑み、各企業の業態や経営環境等を踏まえた重要性の判断を前提としつつ、特に、Scope1(事業者自らによる直接排出)・Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)のGHG排出量について、企業において積極的に開示することが期待される
    • 人的資本、多様性に関する開示に当たって、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差といった多様性に関する指標については、投資判断に有用である連結ベースでの開示に努めるべき
  • 「戦略」と「指標及び目標」について、各企業が重要性を判断した上で記載しないこととした場合でも、当該判断やその根拠の開示を行うことが期待される
  • 国内における具体的開示内容の設定が行われていないサステナビリティ情報の記載に当たって、例えば、国際的に確立された開示の枠組みである気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)またはそれと同等の枠組みに基づく開示をした場合には、適用した開示の枠組みの名称を記載することが考えられる

なお、サステナビリティ情報については、現在、国内外において、開示の基準策定やその活用の動きが急速に進んでいる状況です。そのため、その開示における「重要性(マテリアリティ)」の考え方を含めて、今後、国内外の動向も踏まえつつ、記述情報の開示に関する原則の改訂が予定されているようです。

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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