グローバル・ミニマム課税:①国際最低課税額に対する法人税の納税義務者(大綱)
一昨日(2022年12月16日)、令和5年度与党税制改正大綱が公表されたので、そのうち「グローバル・ミニマム課税への対応」という項目について、少しずつ書いていきます。
端的には、GloBEルール(第2の柱)のうちIIRに関するお話です。
W杯決勝開始から逆算し、「1記事あたり10分で書き切る」という縛りでやるので、内容の正確性は保証しません(誰もブログに正確な情報は求めてないでしょうけど)。ただ、大綱を読むのはしんどかったので、少しでも皆さんの苦痛が和らぐといいなと思います。
まず、今回は国際最低課税額に対する法人税の納税義務者がテーマです。
Table of Contents
1. 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)
大綱では、「グローバル・ミニマム課税への対応」という項目で、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設等に言及されています。
昨日も書きましたが、これはGloBEルールのうち、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)のお話で、設計としては、国別実効税率を基準税率(15%)までトップアップするような形で国際最低課税額を計算し、それを法人税と地方法人税で90.7:9.3に按分する感じです。
メインは法人税のほうなので、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)について、以下で基本的な仕組み(特に適用対象)に触れます(あとで地方法人税のことも少し書きます)。
2. GloBEルールの適用対象
前提として、GloBEルールの適用対象は、さっぱり言うと、連結総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループ(MNE Group)に属する「構成事業体」(Constituent Entities)です(以下の記事参照)。もう少し正確には「過去4事業年度のうち2事業年度で連結総収入金額が7億5,000万ユーロ以上」ですけど。
以下で確認する大綱の内容もこれとだいたい同じです。
3. 国際最低課税額に対する法人税の納税義務者
まず、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の納税義務者は、内国法人(公共法人以外)です。日本の税制なので、当然ですが。
もう少し範囲を狭めると、大綱では、「特定多国籍企業グループ等」に属する内国法人に対して、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)を課することとされています。
念のためですが、これは日本語です。
この「特定多国籍企業グループ等」の範囲については、以下の順番で見ていくのが良さそうです。
→ 多国籍企業グループ等
→ 特定多国籍企業グループ等
① 企業グループ等
まず、「企業グループ等」とは、以下をいいます。
(2) 会社等(上記(1)の企業集団に属する会社等を除く)のうち、その会社等の恒久的施設等の所在地国がその会社等の所在地国以外の国または地域であるもの
(注)上記の「最終親会社」とは、他の会社等の支配持分を直接または間接に有する会社等で、他の会社等がその支配持分を直接または間接に有しないものをいいます。語感のとおりです。
② 多国籍企業グループ等
次に、「多国籍企業グループ等」とは、以下の企業グループ等をいいます。
・上記(2)の企業グループ等
③ 特定多国籍企業グループ等
最後に、「特定多国籍企業グループ等」とは、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ相当額以上であるものをいいます。最終的には円換算するんだとは思いますが。
なので、だいたい上に書いたGloBEルールの適用対象と同じですね。
いずれにせよ、期首時点では、すでにその年度に適用があるかどうかを判定できる状況だということです。
4. 構成会社等の範囲
ちなみに、上記の多国籍企業グループ等に含まれる会社等が「構成会社等」であり、その範囲は以下のとおりです。
・上記(2)の会社等+その会社等の恒久的施設等
(注)ただし、政府関係機関、国際機関その他の一定の会社等を除きます。
これは後々使う概念なので、念のためです。
今回はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。