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第5回 ローカルファイルの記載例:(機能及び)リスク

引き続き「国外関連取引の内容等の検討」シリーズです。

ここまでは、比較可能性分析にあたって、自社及び国外関連者の「機能及びリスク」を事前に分析しておくことが大前提になるということをお伝えしてきました。前回は、このうちの「機能」について、ローカルファイルへの記載内容という視点で確認しましたが、今回は「リスク」のほうです。

 

1. ローカルファイルに含まれる書類

まず、ローカルファイルには、「国外関連取引において法人及び国外関連者が果たす機能並びに負担するリスクに係る事項を記載した書類」が含まれます。

つまり、ローカルファイルには、法人及び国外関連者がどのような機能を果たし、どのようなリスクを負担しているのかを記載しなければならないということです。

2. リスクの具体例

ローカルファイルに記載するのは、法人及び国外関連者が負担しているリスクですが、ここでいうリスクは事業の遂行に当たり想定されるリスク全般であり、例えば、以下が該当します。

  • 売掛債権が回収不能となる貸倒リスク
  • 商品や製品が売れ残る在庫リスク
  • 研究開発の成否と責任に係る研究開発リスク
  • 品質保証リスク
  • 製造物責任リスク
  • 外貨建取引に係る為替変動リスク
  • 市場での競争の激化・需給の変化等による市場価格(相場)の変動に係る市場リスク
  • 経営上の事業リスク等

「貸倒リスク」や「在庫リスク」なんかはわかりやすいところかと思います。「研究開発リスク」は重要ですね。あとは「為替変動リスク」なんかは取扱いが厄介です。

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3. 「誰がどのようなリスクを負担しているか」

上記の「法人及び国外関連者が…どのようなリスクを負担しているのか」というのは、非常に漠然とした表現ですが、例示集(国税庁 「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成に当たっての例示集」)が、この点について重要と思われる要記載事項に言及しています(以下です)。

  • 法人または国外関連者のどちらがリスクを負担しているのか
  • その者はリスク管理をどのように行っているのか
  • リスクが顕在化した場合の影響(例えば、為替相場の変動が営業利益に与える影響)及び対応策

例えば、国外関連者が海外の販売子会社で、在庫も持たせているとすれば、自然体でいくと貸倒リスクや在庫リスクは販売子会社側が負担します。そういうケースでは、現地でどのようなリスク管理が行われているのか、知っておく必要がありますね。

4. 必要な情報と書類

また、例示集では、必要な情報の例として、以下が挙げられています。

国外関連取引を行うに当たって生ずるリスクの内容及び負担者
リスクの引受けまたは管理のために果たす具体的機能
(例:取引先の与信管理、在庫調整、為替ヘッジ等)
リスクが顕在化した場合の利益への影響、(計算している場合)その影響額及び対応策
(例:急激な為替変動があった場合の取引価格の変更、非関連者に対する価格への転嫁等の取決め)
当該事業年度において、リスクが顕在化した事例の有無、(事例がある場合)その影響及び(計算している場合)その影響額

これについて準備する書類については、「機能」とセットなので、前回分をご参照ください。

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5. ローカルファイルの記載例(作成サンプル)

で、さらに具体的に見ていくと、作成サンプル(国税庁 「同時文書化対応ガイド ~ローカルファイルの作成サンプル~」)では、以下のような記載があるので引用します(A社というのが国外関連者です)。

国外関連取引に係る当社とA社の機能及びリスク
⑴ 当社について

(中略)
ロ リスク
 当社は、研究開発、原材料等の価格変動、製造物責任・製品保証、為替変動に関するリスクを負っています。
(中略)
添付資料18 国外関連取引に係る当社及びA社のリスクに関する整理表
(中略)
⑵ A社について
(中略)
ロ リスク
 A社は、原材料等の価格変動、市場価格の変動、製造ラインの操業度、製品の在庫、信用、製造物責任・製品保証、為替変動に関するリスクを負っています。

前回の「機能」に比べると、「リスク」のほうは書き方がさっぱりしてますね。

今日はここまでです。次回は、機能とリスクをまとめて、整理表というものを見てみたいと思います。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

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