ペーパー・カンパニーの判定における実体基準(タックス・ヘイブン対策税制)
今日も少し普段のお仕事のことを書きます。
Table of Contents
1. タックス・ヘイブン対策税制
最近、タックス・ヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)に関するご相談を頂くことが多いので、そのことについて。
今回は、ペーパー・カンパニーの判定における実体基準のお話です。
2. ペーパー・カンパニーとは
タックス・ヘイブン対策税制において、特定外国関係会社に含まれるペーパー・カンパニーとは、以下のいずれにも該当しない外国関係会社をいいます。
その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している
②管理支配基準
その本店または主たる事務所の所在する国または地域(「本店所在地国」)においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている
片方該当すれば、一応はセーフということです。
それと、2019年度税制改正により、外国子会社の株式等の保有を主たる事業とする一定の外国関係会社などは、ペーパー・カンパニーの範囲から除外されています(例えば、こちら)。
3. 実体基準とは
上記①の実体基準については、固定施設の場所は本店所在地国に限られないため、外国関係会社が他国の支店などに事業を行うために必要な固定施設を有していれば、ペーパー・カンパニーには該当しません。
この点は、経済活動基準における実体基準と異なるところですね。
4. 主たる事業のために固定施設が必要かどうか
ちなみに、この場合の固定施設は、所有か賃貸かといった形式は問われません。
しかしながら、固定施設を有しているだけでは不十分であり、「必要な固定施設であるかどうか」が問題になり、この点が結構重要です。
具体的には、実体基準は、外国関係会社が「その主たる事業に係る活動を行うために必要となる」固定施設を有していることをいうため、これに該当するか否かは、実質判定しなければなりません。
言い換えると、外国関係会社が固定施設を有していたとしても、それが主たる事業に係る活動を行うために使用されるものでない場合には、主たる事業を行うに必要と認められる事務所等には該当しないということです。
5. 基本的な考え方
実態基準の基本的な考え方として、以下のポイントを見て、「主たる事業を行うに必要と認められる固定施設」に該当するかどうかを判断します。
事務所の一室であっても、上記に該当すればセーフです。
極端なケースでは、事務所の一室の中の一画であっても、セーフになりうるってことですね。
一方で、ちゃんとした事務所があったとしても、その事業活動に使用する必要がないと認められる場合(例えば、その主たる事業が工業所有権に係る使用料を得ることのみである場合)には、その事務所はその主たる事業に必要な固定施設には該当しないものと考えられます。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。