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電子帳簿保存法

電子帳簿保存法(電子取引):タイムスタンプはいつまでに付与すればいいか

引き続き、電子帳簿保存法における電子取引の制度のお話です。

今回も、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】をもとにタイムスタンプについて書きます。

具体的には、タイムスタンプをいつまでに付与すればいいか、というテーマです。

ちなみに、タイムスタンプ自体については、こちらをご参照ください。

0. この記事のポイント

電子取引の取引情報をデータ保存する際には、改竄防止措置をとる必要がありますが、その1つの手段にタイムスタンプの付与があります。タイムスタンプの付与には期間制限があり、取引情報の授受後、「速やかに(=おおむね7営業日以内に)」行う方法と、「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに(=最長で2か月とおおむね7営業日以内に)」行う方法があります(後者の場合、事務処理規程が必要)。

 

 

1. タイムスタンプは改竄防止措置の1つ

1つ目の前提として、タイムスタンプが何かについては、以下の記事をご参照ください。

 

2つ目の前提として、2022年(令和4年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報については、一定の要件を満たす形で、データのまま保存する必要があります(書面は不可)。その要件の1つが改竄防止措置(真実性の確保)であり、具体的には以下のいずれかの対応が必要になります。

①タイムスタンプが付与されたデータを受領する
②速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付与する
③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムを利用する
④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付けする

このうち、自社でタイムスタンプを付与するのは②ですが、これをもうちょっと正確に書くと、以下のとおりです(施行規則の抜粋です)。

次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。

イ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。

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2. タイムスタンプの期間制限

要は、期間制限があるということで、選択肢としては、以下の2つがあります。

  • 「速やかに」タイムスタンプを付与する
  • 「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」タイムスタンプを付与する
  • 3. 選択肢➀:「速やかに」付与

    タイムスタンプの付与タイミングについて、1つ目の選択肢は、取引情報の授受後、「速やかに」タイムスタンプを付与する方法です。

    「速やかに」の意味合いは取扱通達で明記されており、「おおむね7営業日以内に」ということです。

    この期間制限が設けられているのは、データ改竄の可能性を低くする観点からです。

    その意味では、電子取引により取引情報を授受した後「直ちに」行うことが理想的ですが、実際には、休日等をまたいで処理する場合があることも勘案し、「7営業日以内に」行うことになっています。

    しかも、「7営業日以内に」ではなく、「おおむね7営業日以内に」とされています。

    これは、毎日事務所へ出勤しない勤務形態の社員がタイムスタンプの処理を行う場合のように、業種業態によっては必ずしも7営業日以内にタイムスタンプを付与することができない場合もあるので、それに対する配慮です。

    親切ですね。その親切さが、電子取引の制度自体を考えるときに発揮されたらよかったのですが。

    ちなみに、やむを得ない事由があれば、おおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与できない場合でも、即要件違反になることはありません(その事由が解消した後、直ちに付与すればOK)。

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    4. 選択肢➁:「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」付与

    タイムスタンプの付与タイミングについて、もう1つの選択肢は、「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに」タイムスタンプを付与する方法です。

    上記のとおり「速やかに=おおむね7営業日以内に」なので、この選択肢を採用した場合、「業務の処理に係る通常の期間を経過した後、おおむね7営業日以内に」タイムスタンプを付与することになります。

    じゃあ、具体的にどういうスケジュールになるかというと、最長では、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を授受してから2か月とおおむね7営業日以内にタイムスタンプを付与すればよいこととなります。

    (1) 具体的な付与スケジュール

    国税庁のQ&A(一問一答)では、以下の例が挙げられています。

    4月21日に取引データを受領
    ➡ 業務処理サイクルの最長2か月(暦の上での2か月)は6月20日
    ➡ そのおおむね7営業日後までにタイムスタンプを付与すればよい

    これだったら、結構余裕がありますね。

    なので、どうしても締め切りに追われたいドMの人を除いては、こっちの選択肢でいいと思います(事務処理規程は必要になりますが)。

    (2) 「業務の処理に係る通常の期間」とは

    ちなみに、上記では「最長2か月」と書きましたが、「業務の処理に係る通常の期間」とは、それぞれの企業において採用している業務処理サイクルの期間をいいます(通達に書いてあります)。

    経費精算なんかはわかりやすいと思いますが、1か月以内とか、月次決算の締めまで(翌月初の数日以内)とか、そういう企業ごとの業務処理サイクルがあると思います。

    なので、2か月というのはあくまでも最長であって、仮に1か月を業務処理サイクルとしている企業であれば、「1か月とおおむね7営業日以内に」タイムスタンプを付与することになります。

    今日はここまでです。

    では、では。

    電子帳簿保存法に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。第2版の紹介記事はこちら)。

    第3版 電子帳簿保存法の制度と実務(Amazon)

     

    ■電子帳簿保存法の電子取引に関する記事の一覧はこちら

     

    この記事を書いたのは…
    佐和 周(公認会計士・税理士)
    現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

     

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