インボイス制度:免税事業者からの仕入れに係る経過措置(80%→50%)の適用要件
また消費税のお話に戻ります。
2021年7月30日に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されたので(詳細はこちら)、その内容についてです。
今日は、免税事業者からの仕入れに係る経過措置の適用要件のことを書きます。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 免税事業者からの仕入れ
適格請求書等保存方式の下では、免税事業者(適格請求書発行事業者以外の者)からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことができません。
これは、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けられないからです。
ただし、この点については、経過措置があり、インボイス制度導入から一定期間は、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できます。
経過措置を適用できる期間等は、以下のとおりです。
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで → 仕入税額相当額の50%
このあたりは以下の記事にまとめています。
2. 経過措置の適用要件
この経過措置の適用を受けるためには、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となります。
以下、「(1) 帳簿の記載事項→(2) 請求書等の記載事項」の順に見ていきます。
(1) 帳簿の記載事項
まず、帳簿に記載が必要な事項は以下のとおりです。
② 課税仕入れを行った年月日
③ 課税仕入れに係る資産または役務の内容(注)及び経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
④ 課税仕入れに係る支払対価の額
(注)課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨も記載が必要です。
端的には、通常の(区分記載請求書等保存方式の)記載事項に加えて、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載(上記③)が必要になります。
例えば、「80%控除対象」みたいな感じで帳簿に書いておけばいいってことですね。
改訂後Q&Aに追加された内容
改訂後のQ&Aでは、上記③の「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載について、少しだけ内容が追加されました。
具体的には、以下のいずれでもOKということが明記されました。
普通は後者によると思うので、細かな話ですけど、こういう情報はありがたいですね。
(2) 請求書等の記載事項
一方、請求書等に必要な記載事項は以下のとおりです。
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(注)
④ 税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
⑤ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名または名称
(注)課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨も記載が必要です。
請求書等については、経過措置の適用を受けるからといって特別な記載事項が求められるわけではなく、普通の(といっても、適格請求書等ではなく)区分記載請求書等と同様の記載事項になっています。
改訂後Q&Aに追加された内容
改訂後のQ&Aでは、上記③と④について、少しだけ内容が追加されました。
具体的には、免税事業者から受領した請求書等の内容について、③注書きの「資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨」及び④の「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」の記載がない場合に限っては、受領者が自ら請求書等に追記して保存することが認められるという点です。
ふぅーん、という感じです。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。