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グローバル・ミニマム課税

グローバル・ミニマム課税:独立企業間価格(相当額)に基づく当期純損益金額の調整

いまは不定期でグローバル・ミニマム課税について書いています(全体の構成はこちら)。

今回は、個別計算所得等の金額の計算という文脈で、独立企業間価格(相当額)に基づく当期純損益金額の調整について。

 

1. 税引後当期純損益金額に対する主な調整

構成会社等の当期純損益金額の計算に際しては、税引後当期純損益金額がベースになりますが、それに対して、いくつか調整を行う必要があります。

前回確認したとおり、PEや導管会社等のことを無視すれば、主な調整内容は「簿価の調整」です。

これは、会計数値(個別P/L)を基礎とする税引後当期純損益金額を「会計上の簿価に基づき計算された会計上の金額」と考え、それをそのまま使用してしまうと、国別実効税率が歪んでしまうような一定の場合には、その簿価を修正する(→会計上の簿価とは異なるベースで損益を計算する)というイメージです。

具体的な調整項目としては、以下があります。

(1) 独立企業間価格(相当額)に基づく当期純損益金額の調整
(2) 特定組織再編成により資産または負債の移転が行われた場合の当期純損益金額の調整
(3) プッシュダウン会計が適用される場合の当期純損益金額の調整

2. 独立企業間価格に基づく当期純損益金額の調整

今回は、このうち、(1)独立企業間価格(相当額)に基づく当期純損益金額の調整について。

この調整は、単純にいうと、多国籍企業グループ等の内部取引で国を跨ぐものについては、独立企業間価格で行われたものとみなして、それぞれの構成会社等の当期純損益金額を計算する(そうなるように調整する)という内容です。

ここでいう独立企業間価格は、移転価格税制のやつです。

まあ、皆さん、外・外の取引も含めて、独立企業間価格で取引されていることは検証されているでしょうから(棒)、こういう調整は余裕でクリアなんでしょうね。

ただ、実際には、そこまでハードルは高くなくて、以下の通達(18-1-33)があります。

…対象取引…につき、独立企業間価格…であるとして、構成会社等…が…所在地国の租税に関する法令を執行する当局に独立企業原則に従った価格として申告した額が、当該対象取引に係る金額と同じである場合には、次に掲げるときを除き、当該対象取引に係る金額を独立企業間価格であるものとして取り扱って差し支えない。

(適当に抜粋)

で、「次に掲げるとき」というのは、以下のように独立企業原則に疑義が生じているケースです。

⑴ 移転価格課税に係る二国間の相互協議による合意がある場合
⑵ 事前確認の申出につき二国間の確認がある場合
⑶ 事前確認の申出につき一方の国の確認がある場合
⑷ 対象取引の当事者による修正した申告がある場合
⑸ 一方の税務当局による更正又は決定がある場合

なので、これらに当てはまらなければ、特に調整は不要です。当てはまれば、これらにより確定した金額に基づいて、税引後当期純損益金額に対する調整を行う感じだと思います(そのほうが、より独立企業原則に整合するので)。

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3. 独立企業間価格相当額に基づく当期純損益金額の調整

上記は、(日本の)移転価格税制と同じクロスボーダー取引のお話ですが、実は国内取引についても一定の場合には調整が求められます。

そもそもグローバル・ミニマム課税においては、この後のプロセスで国別計算を行う(ブレンドする)ので、国内取引の取引価格の歪みは気にならないはずなのですが、一方で損失が生じる場合には、実効税率に影響してしまう可能性があります(というか、意図的に損失を生じさせれば、実効税率を操作できそうです)。

ということで、国内取引であっても、損失が生じる場合は、その取引は独立企業間価格相当額で行われたものとみなして、当期純損益金額を計算する(そうなるように調整する)必要があります。

あ、独立企業間価格「相当額」というのは、独立企業間価格の国内取引版です。

国内取引に関する要調整内容についてもうちょっと正確にいうと、以下のような感じです(法令155の16④の抜粋です)。

構成会社等…が、他の構成会社等(当該構成会社等の所在地国を所在地国とするものに限る。)…との間で行つた資産の販売その他これに類する取引により生じた損失の額を税引後当期純損益金額…に係る損失の額としている場合において、これらの取引に係る金額が独立企業間価格相当額…と異なるときは、これらの取引は独立企業間価格相当額で行われたものとみなして、当該対象会計年度に係る当該構成会社等…の税引後当期純損益金額…を計算する。

今回はここまでです。

では、では。

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この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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