インボイス制度:タクシー代のうち仕入税額控除の対象になる部分
消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)について、ここ数か月の議論のアップデートです。
今回のテーマは、タクシー代のうち仕入税額控除の対象になる部分です。
Table of Contents
1. タクシー業界のインボイス制度対応
タクシー業界のインボイス制度対応のことは、だいぶ前ですけど、以下に書きました(真面目には書いていません)。
2. インボイス登録をしていないタクシー
税務通信(3757号)のショウ・ウインドウにタクシー代のことが書いてあったので、ちょっと整理しておこうと思います。
そこでは触れられていませんでしたが、そのタクシーがインボイス登録をしていれば、何も問題はありません。
問題は、インボイス登録をしていない個人タクシーなどを利用した場合です。
3. タクシー代に係る仕入税額控除
(1) 経過措置を使うパターン
企業の従業員等がそういう個人タクシーを利用した場合、最もシンプルなのは、経過措置を使うパターンです。
つまり、制度開始から6年間は、経過措置を使うことで、仕入税額相当額の80%(または50%)を控除できます。
逆にいうと、この場合、仕入税額相当額の一定割合しか控除できません。
(2) 出張旅費等特例を使うパターン
しかしながら、出張旅費等特例を使えるパターンもあります。
この場合、タクシー代に係る仕入税額相当額の全額を仕入税額控除の対象とすることも可能です。
出張旅費等特例については、以下の記事をご参照頂ければと思いますが、端的には、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるものの1つです。同特例では、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等が対象で、旅費規程等に基づく範囲の額であれば、タクシー代でも使えるようです。
(3) 出張旅費等特例で注意が必要なポイント
1点だけ注意が必要なのは、タクシー代の支払方法です。
具体的には、従業員等が法人のクレジットカードでタクシー代を支払った場合には、会社と従業員等の間で金銭の授受が行われないので、出張旅費等特例の対象とはなりません。
あんまり合理的とは思えませんが、そういうお話になってます。
なお、税務通信の記事では、上記以外にも、経過措置としての少額特例にも触れているので、ぜひ実際の記事をご覧ください。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。