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資産除去債務を「合理的に見積ることができない場合」とは

今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。

色々とあって、会計基準を見返しているところです。

 

1. 資産除去債務を合理的に見積ることができない場合の取扱い

資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上します。

ただし、このような場合には、一定の注記が求められます。

2. 資産除去債務を「合理的に見積ることができない場合」とは

適用指針では、資産除去債務を「合理的に見積ることができない場合」とは、決算日現在入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積りを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいうとされています。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 資産除去債務の履行時期を予測することが困難な場合
  • 将来の最終的な除去費用を見積ることが困難な場合

除去費用の見積りは適当にできそうですけど、履行時期の予測は確かに難しい問題だなと思います(見積金額にどの程度影響するかは別として)。

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(1) 適用指針の設例

適用指針の設例では、合理的な見積りができないため資産除去債務を計上しないパターンとして、以下のような前提条件が示されています。

  • Y社は、2X00 年4 月1 日に、Z社の有するオフィスビルに本社を移転
  • Y社がZ社と締結した不動産賃貸借契約では、契約終了時にY社が原状回復を行いZ社に返還する旨の条項が盛り込まれている
  • 賃貸借契約の期間は2 年間であるが、契約期間満了から6 か月前に契約当事者から契約を更新しない旨が相手方に通知されない限り、賃貸借契約は自動的に更新継続する
  • Y社では、今後再度本社を移転する計画はなく、当該賃貸借契約を継続させることを意図している

これを前提とした場合、「賃貸借契約の継続期間を合理的に見積ることができない」という結論になっています。

(2) 適用指針の注記例

で、注記は以下のような感じです。

当社は、本社オフィスの不動産賃借契約に基づき、オフィスの退去時における原状回復に係る債務を有しているが、当該債務に関連する賃借資産の使用期間が明確でなく、将来本社を移転する予定もないことから、資産除去債務を合理的に見積ることができない。そのため、当該債務に見合う資産除去債務を計上していない。

この例もそうですが、オフィスの場合、賃貸借契約に基づく原状回復義務については、こういう話がよく議論になるのではないかと思います(知らんけど)。

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3. 資産除去債務を「合理的に見積ることができない場合」に該当しない場合

一方で、「合理的に見積ることができない場合」に該当しそうだけど、該当しないケースもあります。

具体的には、資産除去債務の履行時期や除去の方法が明確にならないことなどにより、その金額が確定しない場合であっても、履行時期の範囲及び蓋然性について合理的に見積るための情報が入手可能なときは、資産除去債務を合理的に見積ることが「できる」場合に該当します。

適用指針では、例えば、キャッシュ・フローの発生額は確定していないものの、キャッシュ・フローの発生確率の分布が推定可能な場合には、資産除去債務を合理的に見積って、負債として計上することが必要とされています。

(オフィスではなく)店舗に係る賃貸借契約の場合、ある程度の本数の契約があれば、何となく履行時期は合理的に見積もれそうな気がしますが、どうなんでしょうね。

実際には、以下のような注記もそこそこあります。

2.資産除去債務のうち連結貸借対照表に計上していないもの
当社グループは、事業用定期借地契約等に係るもの以外の不動産賃貸借契約に基づき、一部の店舗等の退去時に原状回復に係る債務が生じる可能性がありますが、賃借資産の使用期間及び費用の発生の可能性が明確でなく、将来退去する予定もないことから、資産除去債務の合理的見積りが困難であるため、資産除去債務を計上しておりません。

ある程度の店舗数があれば、適用指針がいう「キャッシュ・フローの発生確率の分布」なんかは、だいたい推定可能なようにも思えますが、そうでもないのかもしれません。

誰かちゃんと説明してください。

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4. 資産除去債務の金額を合理的に見積ることができるようになった場合

これまで合理的に見積ることができなかった資産除去債務の金額を合理的に見積ることができるようになった場合についても、将来キャッシュ・フローの見積りの変更と同様に処理することとされています。

すなわち、割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合の当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します。

例えば、以下のようなケースです。

(会計上の見積りの変更)
(資産除去債務の見積りの変更) 
 当社は、賃貸契約に基づき使用するオフィスについては、退去時における原状回復に係る債務を有しておりますが、当該債務に関する賃借資産の使用期限が明確ではなく、移転等も予定されていなかったことから、資産除去債務を合理的に見積ることができず、当該債務に見合う資産除去債務を計上しておりませんでした。
 当連結会計年度において、●●本社の大規模リニューアル等の際に検討を行ったことに伴い、賃借資産の使用期限及び原状回復義務の履行時期を合理的に見積ることが可能となったため、資産除去債務をXXX千円計上しております。
 なお、当該見積りの変更は、当連結会計年度末に行ったため当連結会計年度の損益に与える影響はありません。

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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