資産除去債務の会計処理(意味はよく分からない)
今週は、私が苦手な資産除去債務のことを書いています。
色々とあって、会計基準を見返しているところです。
Table of Contents
1. 資産除去債務の会計処理
資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって発生した時に負債として計上します。
2. 資産除去債務の会計処理の考え方
(1) 会計処理の考え方(資産負債の両建処理)
資産除去債務に該当する場合、言い換えると、法律上の義務に基づく場合などには、有形固定資産の除去サービスに係る支払いは不可避的に生じます。
そのため、たとえその支払いが後日であっても、債務として負担している金額が合理的に見積られることを条件に、資産除去債務の全額を負債として計上することになります。
また、それと同時に、同額を有形固定資産の取得原価に反映させる処理を行います(いわゆる「資産負債の両建処理」)。
(2) 仕訳で見ると
仕訳で見ると、以下のような感じです。
この仕訳自体に損益インパクトはありません。
で、資産計上された除去費用は、以下のように減価償却を通じて期間配分されます。
個人的には、これは資産除去債務のめんどくさいところです。引当金として計上すれば、損益にダイレクトに影響する一方、資産除去債務として計上すれば、その一部(対応する資産の減価償却費など)しか損益に影響しないということなので。しかも、資産除去債務なのかどうかの見極めは、どうもしっくりこないことが多いし。
(3) 両建処理の意味合い
気を取り直して、会計基準によると、このような資産負債の両建処理の意味合いは、以下のとおりです。
- 有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上する
- それとともに、対応する除去費用を有形固定資産の取得原価に含めることで、その投資について回収すべき額を引き上げる
「回収すべき額を引き上げるために資産を計上するのかあ」という感じです。
3. 別の考え方(引当金)
資産除去債務会計基準上は採用されていませんが、別の考え方に基づく会計処理として、引当金処理があります。
具体的には、有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)の費消を、当該有形固定資産の使用に応じて各期間に費用配分し、それに対応する金額を負債として認識する考え方です。
このような引当金処理ではなく、上記のような資産負債の両建処理が採用されたのは、主に以下のような理由によるようです。
- 引当金処理の場合には、有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されないことから、資産除去債務の負債計上が不十分である
- 資産負債の両建処理の場合、有形固定資産に対応する除去費用が、減価償却を通じて各期に配分されるため、資産負債の両建処理は引当金処理を包摂するものといえる
- 資産負債の両建処理は、国際的な会計基準とのコンバージェンスにも資するものである
1つ目の理由はよくわかりますし、3つ目が答えなんだろうなとも思います。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。