セグメント情報等の開示とその使い方(読み方)
少しの間、会計のことを書きます。
Table of Contents
1. 財務数値への影響がわかるケース100に書かなかったこと
ちょっと前に、『この取引でB/S・P/Lはどう動く? 財務数値への影響がわかるケース100』という本を書きました(書評のご紹介はこちら)。
本の性質上、そこでは触れられなかったものの、個人的に大事だと思うのがセグメント情報です。
ということで、セグメント情報について書いていきたいと思います。
2. セグメント情報「等」
まず、セグメント情報は(主に)連結財務諸表の注記ですが、連結財務諸表を見るときには、セグメント情報もセットで見たほうがいいです。それくらい使える情報です。
セグメント情報は、シンプルにいうと、連結財務諸表(特に連結損益計算書)を分解した情報なので、グループ全体の業績などを「色んな断面でカットしたもの」というイメージです。
まあ、セグメントなので、セグメントですね(笑)
ちなみに、セグメント情報の開示はセグメント会計基準に基づいて行われますが、セグメント会計基準で取り扱われているのは、「セグメント情報」ではなく、セグメント情報「等」です。具体的には以下の開示項目が含まれます。
(2) セグメント情報の関連情報
(3) 固定資産の減損損失に関する報告セグメント別情報
(4) のれんに関する報告セグメント別情報
それぞれの項目の内容は、また別の機会に書きますが、セグメント情報という意味では(1)がメインです(そりゃそうか)。
3. セグメント情報の使い方
セグメント情報の使い方として最も重要なのが、セグメント別の業績の分析で(たぶん)、要は連結損益計算書上の(=グループ全体の)業績をセグメント別に分解して分析するイメージです。
ちなみに、MD&A(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)にもセグメント別の業績の分析があるため、これとセットで見ることが多いと思います。
(1) どんなセグメントがあるか
セグメント情報の見方という意味では、まずはそのグループにどういうセグメントがあるのかを把握します。少し言い方を変えると、「どの程度多角化しているのか」ということです。
「報告セグメントの概要」を見れば、各セグメントの内容はわかるはずです。
(2) 各セグメントの業績
それを前提に、各セグメントの業績(売上高や利益など)を追いかけます。
当然のことですが、グループの主力事業を押さえつつ、全体として好業績なのであれば、どのセグメントがそれを牽引しているのかを確認します(成長事業)。そうでなければ、問題となっているセグメントを把握します。もちろん、全体として好業績であっても、赤字のセグメントはないか(不採算事業)等々の確認は必要です。
また、セグメントの分け方にもよりますが、海外事業の重要性なんかも、セグメント情報で見るとわかりやすいと思います。
(3) 各セグメントの資産効率など
それ以外では、セグメント情報には資産の額も開示されているので、それを見れば、どのセグメントに資産が配分されているのかは一目瞭然です。
また、それを使って各セグメントの資産効率を分析することもできます。
端的には、セグメントの損益と組み合わせることで、資産利回りを見るということで(業種によっては、それを金利水準と比べたり)、個人的にはこれは大事な分析だと思っています。
さらに言うと、減価償却費(やのれん償却額)の開示もあるので、簡易的にセグメント別のキャッシュ・フローを分析することもできます。
ちなみに、私も初めて伺うクライアントの場合、事前にセグメント情報を見ておいて、それをもとに色々と聞くようにしています。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。