時価算定会計基準におけるインプットのレベル(レベル1~レベル3)
今日も会計のことを書きます。
時価算定会計基準におけるインプットのレベルについて。
Table of Contents
1. インプットのレベル
時価算定会計基準における「インプット」とは、市場参加者が資産(または負債)の時価を算定する際に用いる仮定をいいます(詳細はこちら)。
このインプットは、レベル1からレベル3に分類されます。
これは、レベル1から順に、優先的に使用するという意味合いです。
つまり、時価の算定にあたっては、レベル1 のインプットが最も優先順位が高く、逆にレベル3 のインプットが最も優先順位が低いということです。
【2022年5月追記】
レベル1~3の分類方法については、以下の記事をご参照ください。
2. レベル1~3の内容
(1) レベル1 のインプット
レベル1 のインプットの定義は、以下のとおりです。
上場株式の株価が典型ですね(その他の具体例についてはこちら)。
レベル1のインプットは、ちゃんとした市場の相場価格(時価の最適な根拠を提供するもの)です。
なので、その価格が利用できる場合、基本的にその価格を調整せずに時価の算定に使用します。
(2) レベル2 のインプット
レベル2のインプットの定義は、以下のとおりです。
レベル2のインプットには、まず、相場価格が含まれます。
ただし、レベル1のインプットとは異なり、「活発な市場の相場価格」ではないか、「同一の資産または負債に関する相場価格」ではないか、どちらか(あるいは両方)の制約付きです(具体的には、以下のとおり)。
また、レベル2のインプットには、相場価格以外にも、以下のようなものが含まれます。
適用指針では、レベル2のインプットの例として、「全期間にわたり観察可能なスワップ・レート」が挙げられています。
具体的には、金利スワップに関して、スワップ・レートが金利スワップのほぼ全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能である場合、そのスワップ・レートは、レベル2のインプットに該当します。
なので、金利スワップの時価は、レベル2の時価になることが多いと思います(その他の具体例についてはこちら)。
(3) レベル3 のインプット
レベル3 のインプットの定義は、以下のとおりです。
レベル3のインプットは、優先順位が最も低いので、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用います。
適用指針では、観察可能な市場データによる裏付けがないスワップ・レートが例示されています。
長期の金利スワップや通貨スワップなんかは、レベル3に分類されることがありそうです。
ただ、日本基準を前提にすると、一般事業会社ではレベル3のインプットは、あまり使わない(自社で算定することはない)かもしれません。
3. 複数のインプットを用いる場合
少し話が変わって、時価算定にあたっては、複数のインプットを用いる場合があります。
具体的には、以下のようなケースです。
この場合、結果としての時価は、重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに分類されます。
つまり、時価算定にあたり、レベル2のインプットとレベル3を用いる場合、これらがともに時価の算定に重要な影響を与えるインプットであれば、算定される時価はレベル3に分類されるということです。
4. 評価技法とレベルとの関係
最後に、インプット・評価技法・時価を分類するレベルの関係について。
まず、インプットの入手可能性(及びその主観性)が評価技法の選択に影響を及ぼす可能性はあります。
例えば、市場の相場価格が入手できないので、DCFを使うようなイメージです。
ただ、時価を分類するレベルについては、評価技法に基づいて決定されるものではありません。少なくとも建前上は。
あくまでも、評価技法に用いるインプットのレベルに基づいて、時価の分類が決定されるということです。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。