電子帳簿保存法(電子取引):紙の請求書の内訳がデータのケース(最悪)
今週は、電子帳簿保存法における電子取引の制度のこと(社内研修で頂いたご質問や実際の業務の中で出てきた疑問など)を書いてます。
今回は、紙の請求書の内訳がデータという最悪のケースについて。
Table of Contents
1. 紙が原本なら紙保存
以下の記事で、データのほかに、 別途書面をやり取りする場合の取扱いを書きました。
端的には、データとは別に書面の請求書や領収書等を受け取っていて、そっちが原本のケースでは、その原本(書面)を保存する必要があります。
2. 紙の内訳がデータのケース
上の記事でも少し触れたのですが、書面と電子データの内容が同一ではなく、書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれている場合などは、いずれについても保存が必要になります。
これ自体は、国税庁の「お問合せの多いご質問(令和3年11月)」(詳細はこちら)に書いてあることなのですが、昨日も触れた、『租税研究』の令和3年11月号の当局解説っぽいもの(財務省の方と国税庁の方)の質疑応答のところに具体例が挙げられています。
まず、状況としては、顧客に対して以下のようなやり取りをしています。
・月内の詳細なデータについては電子データで送信
紙の内訳がデータということですね。
このケースで、月まとめ請求書の控えについて、紙保存を行うのはいいと思います。
3. 内訳データの保存
問題は、その紙保存した請求書控えの内訳として送付した電子データの取扱いです。
質問としては、「これが電子取引に該当するかどうか」ということです。
ただ、このケースでは、もう一歩踏み込んで、「この電子データも紙に出力して保存することは不可能で、電子での保存が必要でしょうか」というのも聞いています。
4. 紙とデータの両方の保存が必要
これに対する回答は、「両者は別個のものですので、電子データで送付した分については、電子データを保存していただく必要があります」ということです。
いやー、すごいな。自分なら、絶対こんなこと言えない。
「請求書自体が紙でも、明細だけは意地でも電子データで保存しろ」ってことは、実質的には「紙かデータに統一しろ」ってことだから、要は「実務を変更しろ」ってことですよね。電子帳簿保存法すげー。
ちなみに、回答にあたっては、「月まとめ請求書の控えと、その内訳を記載した電子データという、中身が異なる2つの書類が存在している」ということが前提になっています。
逆にいうと、電子データのほうの「内訳」という位置付けを変えてしまう方法はありますね。それで通るのかしらんけど。
いずれにせよ、書面の取引情報を電子データで補完するような形はやめたほうがよさそうですね。正本である書面の保存に加えて、補足情報である電子データの保存も必要になるので。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。