第24回 移転価格税制における複数年度検証(と単年度検証)
引き続き「取引単位営業利益法(TNMM)」シリーズです。
今回のテーマは、「複数年度の考慮」です。
Table of Contents
1. 単年度検証が原則
大前提として、移転価格税制の検討は、事業年度ごとに行います。
なので、複数年度を考慮すること(複数年度検証)は、例外的な取扱いに該当します。
2. 複数年度検証は例外
何の話をしているかというと、事務運営指針には、「国外関連取引に係る棚卸資産等が一般的に需要の変化、製品のライフサイクル等により価格が相当程度変動することにより、各事業年度…の情報のみで検討することが適切でない…場合」に関する取扱いがあります。
この場合、どうするかというと、「当該事業年度…の前後の合理的な期間における当該国外関連取引または比較対象取引の候補と考えられる取引の対価の額または利益率等の平均値等を基礎として検討する」ことになります。
つまり、複数年度検証が認められるケースがあるということです。
3. 複数年度検証が認められるケース
では、複数年度検証が認められる場合として、どういうケースが想定されているかを考えてみます。
まず、上記でも触れたように、需要の変化や製品のライフサイクル等により、国外関連取引に相当の価格変動があることが前提になります。
このとき、比較対象取引の候補と考えられる取引が、国外関連取引とは異なり、「一定の水準を保っている場合」や「国外関連取引と異なる価格変動を示している場合」には、単年度でみると、ちゃんと比較できないかもしれません。
もしそうであれば、複数年度検証のほうが適切である可能性があります。
4. 逆に複数年度検証が不要なケース
一方で、超シンプルに言うのであれば、国外関連取引に大きな変動が見られても、比較対象取引(の候補)も同じように動くなら、そのまま比較できるので、複数年度検証は不要といえます。
つまり、複数の比較対象取引の候補が、国外関連取引と概ね同様の価格変動を示している場合には、国外関連取引に係る市況サイクルについて特段考慮する必要はないということです。
こういう話は移転価格税制ではよく出てくると思います。「国外関連取引自体が価格変動の影響を受けるのかどうか」ではなく、「価格変動の影響が比較対象取引候補との間で異なるのかどうか」を重視するということですね。
この点は、次回具体的なケースで見てみたいと思います。
ちなみに、複数年度検証を行う場合であっても、移転価格課税が行われるのは、移転価格税制上の問題が認められる事業年度のみです。当然ですけど。
今日はここまでです。
では、では。