第3回 ケースで見る 独立価格比準法(CUP法)が使える場合
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前回は英語のお話を挟みましたが、その前には、独立価格比準法がどういうものかを確認しました。
極限までシンプルにいうと、「似たような取引と価格を直接比較する方法」です。だから、ベストな方法だけど、比較対象取引を見つけたり、差異調整したりするのが難しいんでしたよね。
目次
独立価格比準法を使うケース(参考事例集)
今回は、この独立価格比準法を使うケースを見てみます。参考事例集の事例1です。
ケースの前提条件
まず、ケースの設定(前提条件)は以下のとおりです。
登場人物
海外子会社:製品Aの販売子会社(10年前にX国に設立)
T社:X国の第三者の代理店
国外関連取引の内容
日本親会社は海外子会社に製品Aを販売し、海外子会社はそれをX国内の第三者の小売店約200社に販売している
比較対象取引の候補
日本親会社はT社に製品Bを販売しており、T社はこれをX国内の小売店に販売している(海外子会社の設立と同時期から)

(出典:国税庁 移転価格事務運営要領 「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」)
国外関連取引 vs. 比較対象取引の候補
- 製品Bは、製品Aと日本親会社内における製品区分(型番)は異なるが、性状・構造・機能等の面で同様の製品である
- 日本親会社が行う「海外子会社への製品Aの販売取引」と「T社への製品Bの販売取引」において、日本親会社が果たしている機能に差はない
- また、いずれにおいても、商標等は使用されていない
- 両取引の取引段階は同じであり、取引規模もおおむね同様である
- 両取引の契約条件 は、取引価格を除き同様である
移転価格税制上の取扱い
このケースについて、移転価格税制上の取扱いは以下のとおりです。
独立企業間価格の算定方法の選定
なぜなら
日本親会社がT社に製品Bを販売する取引については、独立価格比準法を適用する上での比較可能性が十分だから
もうちょっと詳細な比較可能性分析
・日本親会社がT社に製品Bを販売する取引から、独立価格比準法を適用する上での内部比較対象取引 の候補を見いだすことができる
・製品Aと製品Bは、日本親会社内の製品区分が異なるだけで、性状・構造・機能等の面で同種の製品である
・両取引において、日本親会社が果たす機能等に差異はなく、無形資産も使用されていない
・両取引において、契約条件の差異はない
・海外子会社及びT社はいずれもX国の小売店に対して製品を販売する卸売業者であり、両取引の取引段階は同様である
・両取引の取引規模はおおむね同様である
コメント
独立価格比準法は、独立企業間価格を算定する方法のうち、価格と価格を比較するという意味で、最も直接的な方法なので、基本中の基本という感じです。
そして、このケースは内部比較対象取引(日本親会社がT社に製品Bを販売する取引)があり、それをもとに独立価格比準法が使えるので、移転価格税制のうち最もシンプルなケースと言えると思います。
また、上記の比較可能性分析では、「両取引において、日本親会社が果たす機能等に差異はなく、無形資産も使用されていない」等々の記述があります。
これ、ちょっと復習ですけど、以下のような「比較を行うための諸要素」って、ありましたよね(詳細はこちらです)。
②売手または買手の果たす機能(+負担するリスク+使用する無形資産のうち重要な価値のあるもの)
③契約条件
④市場の状況
⑤売手または買手の事業戦略(市場への参入時期等も考慮する)
上記の例は、このうち②売手または買手の果たす機能を見てる感じです。
あと、このケースでは、比較対象取引との間に差異もないので、差異調整なども不要です。
こうやって実際のケースの形で見て頂くと、比較対象取引候補をスクリーニングする作業もイメージがつかみやすいはずので、次回はこの点を確認したいと思います。
ちなみに、「スクリーニング」というのは「選別」のことで、移転価格の世界では日本語とカタカナがあれば、カタカナを選択しておけば、それっぽい感じになります。
今日はここまでです。
では、では。