非居住者等に対する不動産賃貸料の支払いに係る源泉徴収
前回は、源泉所得税の税務調査の実績をまとめました。
今回も引き続き、海外取引の源泉所得税のお話です。
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海外取引の源泉所得税
海外取引については、源泉所得税についてご質問を頂くことも多いので、これから気が向いたときに、ある程度汎用性がありそうなものをご紹介していこう思います。
前回は、非居住者や外国法人への支払いに関して、源泉徴収漏れが生じやすい所得の種類として、以下の3つをお伝えしました。
ただ、税務調査の実績で意外に多かったのが、不動産賃貸料の源泉徴収漏れです。
今回はこれをテーマにしたいと思います。
今回は不動産賃貸料に関するご質問です
不動産賃貸料については、以前、以下のようなご質問を頂きました。今回はこのテーマを考えてみたいと思います。
当社(内国法人)は外国法人から日本国内の不動産を賃借しており、賃借料を支払っていますが、源泉徴収はしていません。これは問題ないのでしょうか?
たぶんアウトですけど、セーフかもしれません(セーフであることを祈っています)。
以下、さっぱり書きます。
アウトである理由
国内法
まず、国内法(所得税法)では、内国法人が非居住者や外国法人(「非居住者等」)から日本国内にある不動産を借り受け、日本国内で賃借料を支払う場合、20.42%の税率で源泉徴収が必要です(復興特別所得税を含む)。
租税条約
次に、租税条約ですが、多くの租税条約では、不動産の賃貸から生じる所得(賃貸料)については、不動産の所在する国においても課税できるという規定になっており、源泉所得税の減免もありません。つまり、このケースでは、そのまま日本で課税できるということです。
結論
以上から、結論としては、国内法に基づく課税のままで、20.42%の税率で源泉徴収が必要です。
そうすると、源泉徴収していないとアウトです。
セーフになるケース
が、セーフのケースもあります。
これは、端的には、外国法人が日本に恒久的施設(PE)を持っているケースです。
具体的には、国内にPEを有する外国法人が、納税地の所轄税務署長から源泉徴収の免除証明書の交付を受け、この証明書を国内源泉所得の支払者に提示した場合には、源泉徴収を要しないこととされています。
なので、そういうケースならセーフです。
ただし、証明書には有効期限があるので、有効期間内であることは確認しておかないと危険です。しかも、支払いの都度、証明書の提示を受ける必要があるということで。
最後に
普通に考えれば、証明書の提示を受けていれば、ちゃんと覚えているはずなので、このケースはアウトかセーフでいうと、たぶんアウトなんでしょうね。
ちなみに、この外国法人は日本国内の賃貸不動産を持っていますが、それが即、日本におけるPEに該当するわけではないと思われます(たぶん)。
これから源泉所得税や消費税のことは、「方向性だけ示す」という趣旨で、こんな感じでシンプルに書いていきます。詳細については、そっち系の書籍をご覧になるか、顧問税理士さんにご確認ください。
では、では。