転勤費用の負担と給与課税(源泉徴収)
今週は、給与課税(源泉所得税)のことを書いています。
今回は、転勤費用の負担について。
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1. 転勤費用に対する給与課税の有無
所得税法では、給与所得者が、勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行(?)をした場合、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるものは非課税になります。
転勤に伴う費用も出張旅費(詳細はこちら)と同じことで、実費弁償というか、給与所得者にとって実質的に所得じゃないものなので、非課税という取扱いになるということです。
ただ、非課税となる範囲を超えて支給される部分については、当然ながら源泉徴収が必要になります。
2. 非課税となる転勤費用の範囲
給与所得者に対して支給する転勤費用が非課税になるのは、上記のとおり、実費弁償的な性格があるためです。このような観点から、非課税になるのは、その旅行に「通常必要とされる」費用の支出に充てられると認められる範囲内のものに限られます。
この点、通達では、その旅行の目的、目的地、行路もしくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位などからみて、「通常必要とされる」ものかどうかを判断することとされています。
判断の際のポイントは以下のとおりです。
(2) 支給額が、同業種・同規模の他社が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものかどうか
上記のとおり、通達では、厳密に実費弁償部分に限って非課税とする取扱いにはなっていません。
ただ、転勤や転居のための支度金といった名目で、渡し切りの支給をすると、給与課税される可能性もあります(使途が転勤費用なのか分からなくなるため)。
その意味では、実費精算のほうが安全だとは思いますが、そうでなくても、支給基準等を明確にするため、相応の金額を社内規程に明記しておくほうがいいんじゃないでしょうか。非課税となる範囲を超えて支給される部分には、源泉徴収が求められるわけなので、調査でごちゃごちゃ言われたらめんどくさいですし。
3. 着後滞在費の取扱い
ちなみに、国税庁の質疑応答事例には、「単身赴任者等に支給するいわゆる着後滞在費」という事例があります。
「いわゆる」と書いてあるのですが、「着後滞在費」というのは、そんなに一般的な用語ではないように思います。
転勤費用ともちょっと関係するので、ざっとだけ見てみると、前提条件は以下のとおりです。
- 会社の都合によって従業員を転勤させることにしたが、
- 転勤先での社宅が確保できないため単身赴任させ、
- 旅費規程により当分の間月額5万円を支給することとしている(=着後滞在費)
上記のとおり、使用人を転勤させた場合、その転勤費用(転居のための旅行に通常必要な支出に充てるため支給する運賃や移転料など)は、原則として非課税です。
一方で、この着後滞在費については、給与等として課税されます。
よくわからないですが、着後滞在費の性質が転勤費用とは異なっている(一種の別居手当または住宅手当と考えられる)からだそうです。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。