インボイス制度:2割特例が適用できない課税期間のパターン(追加)
今週は、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書いてます。
2023年4月に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されたので(詳細はこちら)、そこで新たに追加された項目について。
今回のテーマは、2割特例が適用できない課税期間に関して、前回挙げた7パターンに1つ追加します。
Table of Contents
1. 2割特例が適用できない課税期間(追加)
Q&Aでは、今回の改訂で、以下のようなQが追加されています。
消費税課税事業者選択届出書の提出により納税義務の免除が制限されている場合であっても小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けられない場合があるとのことですが教えてください。
1つはっきり言えるのは、この質問をした人は「、(読点)」が嫌いそうということです。
2. 前提となる知識
前提として、2割特例(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(「消費税課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となった免税事業者を含む)が適格請求書発行事業者となる場合に適用可能です。
一方で、令和5年10月1日より前から「消費税課税事業者選択届出書」の提出により引き続き課税事業者となる同日を含む課税期間、つまり、適格請求書等保存方式の開始前である令和5年9月30日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません。
Q&Aでは、一応これを「2割特例が適用できない課税期間」と位置付けているようです(よくわからないですけど)。
3. 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する場合
とはいうものの、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した事業者であって、「消費税課税事業者選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間から課税事業者となる事業者については、その課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、「消費税課税事業者選択届出書」を失効させることができます。
そうすると、登録申請書の提出によって適格請求書発行事業者になれば、登録日から課税事業者となり、課税事業者となった課税期間から2割特例を適用できることとなります。
なので、実質的には「2割特例が適用できない課税期間」ではない気がします(知らんけど)。
3. Q&Aにおける具体例
わかりづらいかもしれないので(私もわかりづらいので)、Q&Aにおける具体例を使います。
「消費税課税事業者選択不適用届出書の提出に係る特例」として挙げられている例は、「令和5年10月1日を含む課税期間を対象として消費税課税事業者選択届出書を提出した個人事業者が当該届出書を失効させる場合」です。
この場合の取扱いは下図のとおりです。
(出典:国税庁 「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和5年4月改訂) 問113)
4. 「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない場合
このQとは関係しませんが、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない場合であっても、令和5年10月1日を含む課税期間の翌課税期間以後については、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、2割特例を適用することができます。
ただし、その場合でも、昨日挙げた「2割特例の適用ができない課税期間」のパターンに該当しないことは確認しておく必要があります(詳細はこちら)。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。