第3回 銀行等に照会した金利で親子ローン金利を設定することの可否(移転価格税制)
引き続き「金融取引」シリーズです。
今回は銀行等に照会して取得した金利の取扱いについて。
Table of Contents
1. 従来の実務:銀行等への金利水準の照会
金銭の貸借取引には移転価格税制が適用されるので、親子ローンの金利設定にあたっては、移転価格税制への配慮が必要です。
内部比較対象取引がない場合、基本的な考え方としては、借手側の信用力を見て、それに対応する金利を設定する必要があります。
従来は、海外子会社が付き合いのある銀行さんなどに金利水準を照会して、それをベースに金利設定するケースもありました。
というのも、真面目に金利設定しようとすると、専門家のフィーは高いし、データベースも高いし。
銀行に聞いておけば、税務調査でもだいたい…もごもご。
2. 改正後の事務運営指針における取扱い
これは結構話題になりましたが、改正後の移転価格事務運営要領では、銀行等に照会して取得した金利をベースに親子ローンの金利を設定するのはNGになっています。
これは、銀行等に照会して取得した金利(見積り上の利率)やスプレッドのように、現実に行われる取引に依拠しない指標は、市場金利等には該当しないことが明記されているためです(OECDの移転価格ガイドラインでそうなっているので)。
3. 絶対にNGなのか
ただ、改正後の事務運営指針でも、親子ローン金利の設定にあたり、銀行等に照会して取得した金利をベースにすること自体が否定されるわけではありません(言い方が難しいですが)。
当然のことですが、照会した金利水準が「結果として」独立企業間価格(金利)の幅の中にあればセーフだからです。
そう考えると、まあ、銀行が教えてくれるレートなら、…もごもご
関係上、そもそも銀行から教えてもらえるかどうかも分からないので、アナログで「いい感じのレート」を探す手段の1つくらいの位置付けでしょうか(知らんけど)。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。