インボイス制度:従業員の出張旅費等に係る仕入税額控除の際の帳簿記載
今日も、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書きます。
仕事上の調べ物の関係です。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 「3万円以上でも」適格請求書の保存が不要なもの
前提となるお話ですが、現行制度では、少額取引(課税仕入れの支払対価の額の合計額 3 万円未満)については、一定の事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることができます(つまり、請求書等の保存は不要)。一方で、インボイス制度の下では、この「3万円未満なら一律セーフ」という取扱いがなくなる予定なので、大きな騒ぎになっています(たぶん)。
それとは直接関係しないのですが、現行制度には「3万円以上でもセーフ」というケースもあり、インボイス制度の導入後も、この取扱いは残ります。つまり、3万円以上でも、適格請求書の保存なしに仕入税額控除ができる場合があるということです。
このあたりは、以下の記事にまとめています。
2. 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等
具体的には、「従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)」は、「3万円以上でもセーフ」のケースに含まれます。
というのも、従業員は普通、適格請求書発行事業者ではないので、企業としては、そもそも適格請求書の交付を受けることができないからです。
そのため、従業員等に支給する「出張旅費、宿泊費、日当等」のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、この部分については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
3. 求められる帳簿記載の内容
問題は、この場合の帳簿記載です。
まず、消費税法では、この場合の「帳簿」とは、以下の帳簿であるとされています(課税仕入れに係るものである場合)。
イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
ロ 課税仕入れを行つた年月日
ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容…
ニ 課税仕入れに係る支払対価の額…
(注)帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる(いずれかの)仕入れに該当する旨の記載も必要です(出張旅費等の場合、「相手方の住所又は所在地」の記載は不要)
なので、内容としてはこれを書けばいいのですが、気になるのは「どの帳簿に書けばいいか」という点です。
4. どの帳簿に書けばよいのか
この帳簿記載、(仕訳の際の)摘要欄に入力するイメージが浮かぶのですが、この点について、税務通信(3713~3715号)の財務省主税局の人が参加する座談会の記事で言及がありました。
端的には、この場合の「帳簿」というのは、総勘定元帳に限られないとのことです。
上記のとおり、消費税法上の「帳簿」は、一定の事項が記載されているものとしか規定されていません。
なので、従業員等に支給する出張旅費等については、例えば、旅費精算システムの入力データ(やその元資料である旅費精算書)などに遡って出張旅費等であることが確認できれば、それでOKのようです。旅費精算システムのようなものが「補助簿」としての役割を有していると整理しておけば、仕訳の摘要欄や総勘定元帳に「出張旅費等で云々」という記載がなくてもセーフということですね。
考え方としては、「どの支払いが(帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能な)立替旅費に該当するのかを確認できればOK」というスタンスみたいで、これはこれで有難いなと思います。
5. 以下のようなコメントも
あとは、これとどう関係するのかわかりませんが、以下のようなコメントもあります。
ただ、自前のシステムということであれば、例えば「★」とか何か印をつけておいて、「★は旅費の対象です」と、どこかにわかるようにしておくのが重要だと思います。
こうなるとめんどくさいのですが、上記との関係がよくわかりません。
全体としてどう読めばいいのか、私には理解できないので、税務通信の記事をご覧頂ければと思います(企業の方が読むと、イラっとくるはずですが、それでもいい記事です)。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。