消費税のインボイス制度に関する見直し(令和4年度与党税制改正大綱)
少しの間、空き時間に令和4年度税制改正見込みのことを書いています。
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令和4年度与党税制改正大綱
今日(2021年12月10日)、令和4年度与党税制改正大綱が公表されました(こちら)。
改正見込み事項のうち、仕事でチェックが必要な項目だけ、当日のうちに調べずに適当に書こうと思います。
適格請求書等保存方式(インボイス制度)に係る見直し
今回は、適格請求書等保存方式に係る見直しの部分です。
項目としては、「四 消費課税」→「1 適格請求書等保存方式に係る見直し(国税)」です。
これは昨日書いたものも含めて、いくつかの項目があるので、とりあえず書けるものから書いていきます。
免税事業者の登録申請に係る経過措置期間の延長
現状では、免税事業者については、「令和5年10月1日の属する課税期間に限って」課税期間の途中でも登録を受けた日から適格請求書発行事業者になることができます(経過措置)。
大綱では、この経過措置を延長して、令和5年10月1日から令和11年9月30日の属する課税期間においても、課税期間の途中からの登録を可能にするとされています。
具体的には、以下の見直しが行われる見込みです。
① 免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとする。
② 上記①の適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者(その登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である者を除く。)のその登録日の属する課税期間の翌課税期間からその登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用しない。
具体的な内容については、以下の記事をご参照ください。
たぶん、大綱の内容よりはちょっとわかりやすいと思います。
国外事業者に対する登録の拒否と取消
もう1つ、ちょっと分かりづらいのですが、国外事業者による適格請求書発行事業者の登録の問題があります。
具体的には、大綱に以下の見直し内容が記載されています。
③ 特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう。)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている事業者が適格請求書発行事業者の登録申請の際に納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を拒否することができることとし、登録を受けている当該事業者が納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。
「特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう。)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている事業者」というのがややこしいのですよね。
整理すると、国内に事務所や事業所等は有しているものの、住所等は有しない国外事業者です。
「ホテルの一室などを事業所等とした短期滞在の者」みたいに説明されています。
こういう国外事業者は、納税管理人を定めることが必要ですが、現状では、適格請求書発行事業者の登録に際して、納税管理人を定めていない場合でも、登録を拒否できないようです。
そうすると、登録して適格請求書は発行するけど、消費税の申告・納税を行わず、そのまま海外に出て行ってしまうみたいな問題の発生が想定されます。
ということで、納税管理人を定めていない場合には、税務署長が登録を拒否できるようにするってことですね。
もう1つ、虚偽の記載をして登録を受けた場合の税務署長による登録の取消しも同じような話だと思います。
④ 事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書に虚偽の記載をして登録を受けた場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。
この項目はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。