グローバル・ミニマム課税:最終親会社等や構成会社等などの主要な登場人物

予告どおり、不定期でグローバル・ミニマム課税について書いていきます(全体の構成はこちら)。
今回は、予備知識という位置付けで、グローバル・ミニマム課税における主要な登場人物について(人じゃないけど)。
Table of Contents
前提:企業グループ等
前提として、企業グループ等とは、単純には「最終親会社等」の連結範囲に含まれる会社等により構成される企業集団をいいます。
また後日書きますが、ここは税務というよりは会計の話です。
1. 最終親会社等
上記の「企業グループ等」の中心が最終親会社等です。
「最終親会社」とは、他の会社等の「支配持分」を直接または間接に有する会社等であって、その「支配持分」を他の会社等が直接または間接に有しないものをいいます。
つまり、資本関係で見て自分が一番上ということで、語感のとおりです。
そして、最終親会社「等」は、上記の「最終親会社」のほか、企業集団に属しない会社等で恒久的施設等がその会社等の所在地国以外の国にあるものを含みます。ただ、多くの場合、「最終親会社等≒最終親会社」という理解でOKだと思います。
最終親会社等の定義でいう「支配持分」の意味合いもだいたい語感のとおりですが、もう少し正確には、連結等財務諸表にその財産及び損益の状況が連結して記載される会社等に対する所有持分の全部をいいます。
つまり、連結範囲を使って支配持分を特定する仕組みなので、税務の世界では、珍しいといえば珍しい感じなのかもしれません(最後で帰属割合は使いますが)。
ちなみに、最終親会社等はよくUPEと略されます。Ultimate Parent Entityの略です。
2. 構成会社等
上記1の最終親会社等が企業グループ等の中心だとしたら、その企業グループ等の構成要素となる他の会社等があり、これが「構成会社等」です。
構成会社等とは、企業グループ等に属する会社等とその会社等の恒久的施設等をいいます。
ただし、除外会社等は構成会社等には含まれません(除外会社等というのは、基本的には課税対象とならない会社等で、政府関係会社等、国際機関関係会社等、非営利会社等、年金基金などが該当します)。
構成会社等は、企業グループ等に属する会社等なので、シンプルには連結子会社ですが、後述するように一定の非連子も含みます。
また、このブログではあまり扱いませんが、グローバル・ミニマム課税の制度上、恒久的施設等(PE)も1つの構成会社等として扱われます。なので、いろいろと面倒なことがあります(本国では本店と一体で課税所得を計算する国も多いので)。
3. 中間親会社等
上記の最終親会社等と構成会社等は、グローバル・ミニマム課税を理解するためには欠かせない登場人物です。
そして、また次回書きますが、国際最低課税額の納税義務者は、最終親会社等というのがシンプルな形です。
一方で、最終親会社等以外でも、納税義務者になりうる構成会社等はあります。具体的には、中間親会社等と被部分保有親会社等ですが、これらもついでに確認しておきます(以下では、最終親会社等や各種投資会社等に該当しないことを前提にします)。
まず、「中間親会社等」とは、シンプルにいうと、他の構成会社等に対する「所有持分」を直接または間接に有する構成会社等をいいます(ただし、下記4の被部分保有親会社等に該当する構成会社等を除きます)。
めんどくさいので図は書きませんが、資本関係的には、文字どおりの位置付けです。
中間親会社等の定義でいう「所有持分」の意味合いもだいたい語感のとおりですが、もう少し正確には、会社等の純資産の部に計上される当該会社等に対する持分のうち利益の配当を受ける権利などが付されたものをいいます。
ちなみに、中間親会社等はよくIPEと略されます。Intermediate Parent Entityの略です。
4. 被部分保有親会社等
もう1つ、「被部分保有親会社等」とは、シンプルにいうと、他の構成会社等に対する所有持分を直接または間接に有する構成会社等で、その構成会社等に対する外部株主の請求権割合が20%超のものをいいます。
めんどくさいので図は書きませんが、資本関係的には、中間親会社等と同じような位置にあって、外部株主の保有割合が20%超の構成会社等のことです。そういう資本関係なので、「被部分保有」ということなんだと思います。
ちなみに、被部分保有親会社等はよくPOPEと略されます。Partially-Owned Parent Entityの略です。
その他、導管会社等や各種投資会社等などの登場人物もいますが、このあたりはパスします。
5. 共同支配会社等
最後に、このブログではあまり扱いませんが、共同支配会社等について。これがなかったら、グローバル・ミニマム課税に関する書籍はもうちょっと読みやすいと思うくらい、(説明するうえでは)邪魔な存在です。
共同支配会社等とは、シンプルには、以下のいずれかに該当する会社等です(最終親会社等や除外会社等を除きます)。
…最終親会社等の連結等財務諸表において持分法が適用される(こととなる)会社等で、最終親会社等が直接または間接に有する請求権割合が50%以上であるもの
② ①の会社等の連結等財務諸表にその財産及び損益の状況が連結して記載される(こととなる)会社等
③ ①②の会社等の恒久的施設等
ざっくりいうと、50:50のJV(持分法適用関連会社)とそのグループという感じです。
国際最低課税額の計算にあたり、共同支配会社等は、構成会社等に係るグループとは別個のグループとして扱いますが、計算プロセスはほぼ同じです。また、当たり前のことですが、共同支配会社等には国際最低課税額の納税義務は課されません。
今回の感想
ちなみに、今日これを書いてみた感想としては、やっぱり単純化のためには、色々と捨象して説明したほうがよさそうです(例えば、「恒久的施設等」や「共同支配会社等」など)。
ただ、そうすると、書いているときに引っ掛かる(気持ち悪い)ところが出てくるので、このシリーズは途中で挫折しそう。
とりあえず、今回はここまでです。
では、では。
グローバル・ミニマム課税に関するオススメの書籍はこちら
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。社外監査役(東証プライム&スタンダード上場企業)。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。