監査役にとっての「財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)」
今日も監査役監査のことを書きます(お断りなどはこちら)。
今回は、監査役にとっての内部統制報告制度(J-SOX)について、さっぱりと。
Table of Contents
1. 財務報告に係る内部統制報告制度(J-SOX)
まず前提として、上場会社等では、金融商品取引法に基づき「財務報告に係る内部統制」の有効性を自ら評価し、外部に対して(内部統制報告書により)その結果を報告することが求められます。
そして、その評価を外部監査人が監査するので、評価の適正性が確保されるという整理になっています。
普段はこの制度を見ないふりをしている人も多いように思いますが、ちょうどいま制度の見直しが検討されているので、直視せざるをえないという現実もあります。個人的な経験として、内部統制監査には「耐えがたい何か」があるので、以下、要点だけ書きます。
2. 監査役にとっての「財務報告に係る内部統制」
まず、監査役は、財務報告に係る内部統制(内部統制報告書)を直接的に監査するわけではありません。
(1) 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
しかしながら、「財務報告が法令等に従って適正に行われること」は法令の遵守行為でもあります。その意味では、財務報告に係る内部統制は、会社法に定める「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」(詳細はこちら)等の一環と整理できます。
したがって、監査役の立場では、業務監査として、財務報告に係る内部統制の整備等に関する取締役の職務遂行の状況を見ておく必要があります。言い換えると、監査役は、独立した立場から内部統制の整備及び運用状況を監視・検証する役割と責任を有しているということです。
(2) 会計監査人の監査の相当性
また、財務報告に係る内部統制の評価結果と監査結果は、会社法に規定される計算関係書類が法令・定款に従って会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているかどうかにも関連します。
ということは、監査役が会計監査人の監査の方法と結果の相当性等を判断する際にも、内部統制監査報告書の内容は重要になります。その意味では、内部統制監査に関しても、会計監査人と連携する必要があるということです。
つまり、財務報告に係る内部統制については、直接の監査対象じゃないからといって、無視できるものではありません。
3. 監査役が全社的な内部統制に与える影響
少し視点を変えると、制度上で評価が求められる内部統制には、「全社的な内部統制」も含まれます。その基本的要素について、実施基準(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」)では、42の評価項目が例示されていますが、そこには監査役の役割が関係する項目が含まれています(たぶん以下の5項目)。
- 取締役会及び監査役等は、財務報告とその内部統制に関し経営者を適切に監督・監視する責任を理解し、実行しているか
- 監査役等は内部監査人及び監査人と適切な連携を図っているか
- 経営者、取締役会、監査役等及びその他の関係者の間で、情報が適切に伝達・共有されているか
- 内部統制に関する企業外部からの情報を適切に利用し、経営者、取締役会、監査役等に適切に伝達する仕組みとなっているか
- 内部統制に係る開示すべき重要な不備等に関する情報は、経営者、取締役会、監査役等に適切に伝達されているか
そして、内部統制監査においても、全社的な内部統制の評価の妥当性を検討するに当たり、監査役等の活動を含めた経営レベルにおける内部統制の整備及び運用状況を、統制環境等の一部として考慮することとされています。
何が言いたいかというと、監査役がちゃんとしていないと、全社的な内部統制の不備に該当するリスクがあるということです。
監査役と内部統制報告制度は、そういう形でも関係しているということですね。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。