監査役会設置会社と監査等委員会設置会社の違い
今月は、日本監査役協会さんのセミナーがあるので(詳細はこちら)、少しの間、監査役監査のことを書いてます(お断りなどはこちら)。
今回は、監査役会設置会社と監査等委員会設置会社について、さっぱり書きます。
Table of Contents
1. 監査役会設置会社
まず、監査役会設置会社というのは、監査役会を置く(または置かなければならない)株式会社です。そのままです。
(1) 監査役会の設置義務
監査役会の設置義務について、会社法には以下の規定があります。
(大会社における監査役会等の設置義務)
第三百二十八条 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
要は、監査役会の設置義務があるのは、以下の会社です。
②公開会社
③監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社「以外」
①は、最終事業年度に係る貸借対照表の「資本金が5億円以上」または「負債の合計額が200億円以上」のいずれかに該当する会社です。会計監査人を置くかどうかでよくやる判定です。
②は、上場会社という意味ではなく、さっぱりいうと、株式の譲渡制限がない会社です。
③は、また下で書きます。
(2) 監査役会設置会社における監査役
監査役会設置会社においては、監査役は3人以上必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。これって、結構大変なことだと思います。
また、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないとされています。なので、監査役設置会社には、必ず少なくとも1名の常勤監査役がいることになります。
2. 監査等委員会設置会社
次に、監査等委員会設置会社というのは、監査等委員会を置く株式会社です。そのままです。
監査等委員会設置会社は、2014年の会社法改正で導入されましたが、だいぶ馴染んできた気がします。
(1) 監査役の代わりに監査等委員
監査等委員会設置会社について、会社法には以下の規定があって、監査役はいません。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条 (中略)
4 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
5 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。
(以下略)
ただ、誰も監査しないわけじゃなくて、監査等委員(つまり、取締役)が監査を担当します。
(2) 監査等委員会設置会社における監査等委員
監査等委員である取締役は3名以上必要で、過半数は社外取締役でなければなりません。
(取締役の資格等)
第三百三十一条 (中略)
6 監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、三人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない。
ちなみに、監査等委員会設置会社においては、(会社法上は)常勤の監査等委員は求められていません。だいたい常勤の監査等委員がいるとは思いますけど。
3. 両者との違い
以上をまとめると、監査等委員会設置会社と監査役会設置会社との主な相違点は以下のとおりです。
(2) 監査役設置会社では少なくとも1名の常勤監査役が必要であるのに対して、監査等委員会設置会社では(少なくとも制度上は)常勤の監査等委員は必要とされない
(3) 監査役会設置会社における監査役の任期が4年であるのに対して、監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役の任期は2年
(4) 監査役会設置会社における監査役が取締役会での議決権を有しないのに対して、監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役は取締役会での議決権を有する
(何か抜けてる気がするので、また追加すると思います)
実質面で大きな差は(3)でしょうか。
監査役会設置会社の場合、社外監査役の任期も4年になるので、人選に失敗してしまうと替えづらいのはしんどいでしょうね。地位の安定とか、会社法の理念的には色々あると思いますが、やっぱり2年くらいのほうが自由度があっていいように思います。
あとは、監査役会設置会社の場合、コーポレートガバナンス・コードの要請で独立社外取締役を置くとすれば、それに加えて社外監査役も置くのは大変そうですね。
今日はここまでです。
では、では。
↓監査役監査に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。軽い紹介記事はこちら)。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。