電子帳簿保存法(スキャナ保存制度):令和3年度税制改正の適用時期
今日も電子帳簿保存法におけるスキャナ保存制度のお話です。
今回のテーマは、スキャナ保存制度に関する令和3年度税制改正の適用時期です。
つまり、「いつから改正後の要件でスキャナ保存できるか」ということです。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 令和3年度税制改正の適用時期
結論からいうと、令和3年度税制改正後のスキャナ保存の規定は、令和4年1月1日以後に「保存が行われる」国税関係書類について適用されます。
2. 「保存が行われる」とは
これ自体はシンプルなのですが、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【スキャナ保存関係】には、もうちょっと詳しく書いてあります。
上記の「保存が行われる」とは、実際にスキャナ保存が行われることを意味します。
さらにいうと、「入力(タイムスタンプ要件等を満たすまで)が完了した日」がスキャナ保存の行われた日になるので、これが令和4年1月1日以後であればOKです。
3. というわけで
国税庁のQ&A(一問一答)では、その業務の処理に係る通常の期間を最長の2か月で設定しているケースが例示されています。
また別の機会にまとめますが、いわゆる「業務処理サイクル後速やかに入力する場合」ということで、最長では、国税関係書類の受領等から2か月とおおむね7営業日以内に入力すればよいこととなります。
このサイクルによると、令和4年1月1日以後に入力が完了するものには、最も古いもので、令和3年10月末頃に作成または受領した国税関係書類が含まれているはずです。
そういう国税関係書類でも、通常の業務処理サイクルに沿って、令和4年1月1日以後に(スキャナ)保存が行われていれば、改正後の要件が適用されることになります。
要は、令和4年1月1日以後に受領した(作成した)国税関係書類からじゃない、ってことですね。
4. 事業年度の途中からでもOK
「令和4年1月1日以後」ということは、3月決算の企業では、事業年度(令和3年4月1日から令和4年3月31日まで)の途中ということになります。
が、法令に定めるスキャナ保存の要件さえ満たしていれば、事業年度(課税期間)の途中からでもスキャナ保存を行うことは可能です。
つまり、スキャナ保存については、事業年度の始めから一貫して電磁的記録による保存を行うことは求められていないということです。
また、以下の記事に書いたように、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、事前に税務署長の承認を受ける必要もありません(令和3年度税制改正)。
なので、事業年度の切れ目は気にしなくていいということです。
5. スキャナ保存は国税関係書類の種類ごと
もう1つ、スキャナ保存制度への対応は段階的に進めていくこともできます。
これは、スキャナ保存は国税関係書類の種類ごとに適用でき、一部の国税関係書類のみをスキャナ保存により保存することも認められるためです。
例えば、在宅勤務を推進するために、経費精算だけ先にスキャナ保存を導入する、というのもアリだと思います。
ただし、この場合、合理的に区分できる書類の種類の単位ごとに、スキャナ保存を開始した日(保存に代えた日)を明確にしておく必要があります。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。