電子帳簿保存法(電子取引):紙保存の場合の青色申告の承認の取消し
今日も電子帳簿保存法における電子取引の制度のお話です。
今回は、国税庁の電子帳簿保存法Q&A(一問一答)【電子取引関係】をもとに、電子取引の取引情報を書面で保存している場合の青色申告の承認の取消しについて書きます。
私はあまり関心がないですが、これ、少し前に話題になってましたよね。
Table of Contents
0. この記事のポイント
1. 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存
まず、令和4年(2020年)1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、その電磁的記録を出力した書面等による保存(紙保存)をもって、電磁的記録の保存に代えることはできません。
このあたりは、以下の記事にまとめていますが、これが今回のお話の前提になります。
2. 青色申告の承認の取消対象
なので、お話としてはシンプルで、以下のような場合には、保存すべき電磁的記録の保存がなかったものとして、青色申告の承認の取消の対象となり得ます。
ただ、紙保存なら、即取消かというと、そんなことはないです。
国税庁のQ&A(一問一答)では、青色申告の承認の取消しについては、「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」や「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」に基づき、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうか等を検討した上で行うこととしています。
ということで、ケースバイケースなんだと思います。
3. 税務調査で損金性が否認されるか
上記のとおり、紙保存の場合や要件に従わないデータ保存の場合については、国税関係書類以外の書類とみなされません。
ロジックとしては、他者から受領した電子データとの同一性が担保されないから、ということです。
なので、法人税の税務調査でいえば、対応する費用の損金性なんかは否認される可能性があります。
ただし、国税庁のQ&A(一問一答)では、一発アウトではないことが明記されています。
具体的には、申告内容の適正性については、税務調査において納税者からの追加的な説明や資料提出、取引先の情報等を総合勘案して確認することとされています。
要は、紙保存していたからといって、直ちに対応する費用の損金性が否認されるわけではなくて、これもケースバイケースということですね。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。