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子会社株式の実質価額とは-「のれん」相当額の取扱い

最近は、決算時によく揉めるテーマについて、ちょっとずつ書いており、今日は子会社株式の実質価額について考えます。

非上場の子会社株式の実質価額

非上場の子会社株式について、実質価額が著しく(=取得原価に比べて50%程度以上)低下したときには、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合を除いて、減損処理の対象になります。

この場合の実質価額をどう算定するか、というお話です。

まずは会計基準と実務指針の規定から確認したいと思います。

会計基準と実務指針の規定

会計基準には何が書いてあるか

まず、金融商品に関する会計基準では、「市場価格のない株式等」について、発行会社の「財政状態」の悪化により「実質価額」が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理しなければならないとされています(減損処理)。

「市場価格のない株式等」というのは、だいたい昔の「時価を把握することが極めて困難と認められる株式」ですが、非上場の子会社株式はこれに含まれます。

実務指針には何が書いてあるか

一方、実務指針では、「財政状態」や「実質価額」の定義が示されています。

「財政状態」とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した「1株当たり純資産額」をいいます。この場合、決算日までに入手し得る直近の財務諸表を使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していれば、それも加味します。

もう1つ、株式の「実質価額」とは、通常は、「1株当たり純資産額×所有株式数」であるものの、超過収益力や経営権等を反映して、それよりも相当高い価額が実質価額として評価される場合もあるとされています(このあたりは、Q&Aでもちょっと触れられています)。

実質価額とは

以上から、実質価額とは、直近の財務諸表における「1株当たり純資産額×所有株式数」と言っていいと思いますが、実際にはそれをベースにして、以下の要素を加味する必要があります。

(1) 会計処理の修正
(2) 財務諸表に反映されていない情報の反映
(3) 資産等の時価評価
(4) 「のれん」相当額の加味

以下で順番に見ていきます。

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(1) 会計処理の修正

まず、子会社の財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠していない場合、それを修正する必要があります。

この点は、連結子会社であれば問題にならないと思います。普通は一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて財務諸表が作成されているからです。また、そうでなくても、連結手続の一環として個別修正を入れていれば、その情報を使えばいいだけなので。

もし非連結の子会社があれば、改めて会計処理をチェックして、その財務諸表を修正することもあるかもしれませんが、いずれにせよマイナー論点だと思います。

(2) 財務諸表に反映されていない情報の反映

次に、子会社の財務諸表については、直近の財務諸表を使用するものの、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していれば、それも加味する必要があります。

趣旨としては、あくまでも評価時点の1株当たり純資産額(に近似する数値)を用いるということです。

これも特に技術的な問題はないでしょう。

(3) 資産等の時価評価

また、実質価額の算定にあたっては、原則として、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味する必要があります。

つまり、1株当たり純資産額は、時価ベースということですね。

趣旨としては、より実態に近い財政状態を算定した上で、その悪化についての判定を行うということです。

子会社の不動産なんかが重要であれば、時価評価の対象にしてるんじゃないでしょうか。

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(4) 「のれん」相当額の加味

最後に、実質価額の算定にあたっては、子会社の超過収益力や経営権等を反映する必要があります。

端的には、主に買収した子会社について、実質価額に「のれん」相当額を加味するということで、これが一番面倒な論点ではないでしょうか。

なぜ「のれん」相当額を加味するのか

Q&Aにも書いてありますが、買収の際には、1株当たり純資産額に比べて相当高い価額で株式を取得することがあります。端的には、買収対象会社の超過収益力等に対する対価(「のれん」相当額)を支払うようなケースです。

買収直後を考えて頂ければいいと思いますが、この場合、取得原価には「のれん」相当額が含まれているので、対応する子会社の純資産額を大きく上回っているはずです。

そうすると、実質価額のほうにも「のれん」相当額を含めておかないと、買収後いきなり減損処理ということもあり得るわけで、これが実質価額に「のれん」相当額を含める趣旨といえます。

「のれん」相当額をどうやって計算するのか

延々と続く回復可能性の不毛な議論ほどではないですが、この実質価額に含まれる「のれん」相当額の取扱いについても、揉めることがそれなりにあると思います。

でも、この場合の「のれん」相当額って、どうやって計算するのが正しいんでしょうね。

連結子会社であれば、連結財務諸表上の「のれん」があるので、それが議論のベースになります。

ただ、取得時点ならそれでいいのですが、その後、実質価額に含まれる「のれん」相当額も毀損する可能性があります(個人的には、連結財務諸表上の償却とは別物だと思っています)。

この「のれん」相当額の毀損は、子会社の業績を(買収時の)事業計画と比較する形で検討することが多いのではないでしょうか。

つまり、子会社の業績が買収時の想定通りであれば、「のれん」相当額をフルで加算し、そうでなければ、毀損した(かもしれない)と判断するということです。

整理すると

少し議論を整理すると、買収のときには、「のれん」相当額はDCFなどで間接的に算定されていることが多いと思います(Q&Aでは、「第三者による鑑定価額」とか「一般に認められた株価算定方式による評価額」とか書いてあります)。

ということは、多くの場合、「のれん」相当額には、その算定基礎となった事業計画があるはずです。

そうすると、以下のようなロジックで、「のれん」相当額の毀損を考えても、そんなに変じゃないですよね。

子会社の業績が買収時の事業計画(価値算定の基礎となった計画)を下回った
➡ 子会社の超過収益力等が(想定よりも)低下した
➡ 「のれん」相当額が毀損した

実務的には、連結財務諸表上の「のれん」の減損判定とセットでやると思いますが、この部分は、非上場の子会社株式の実質価額の構成要素の中で、一番算定が大変だと思います。

なお、実質価額に「のれん」相当額が含まれるということは、現時点の財政状態の悪化がない場合でも、子会社の超過収益力の低下だけで、実質価額が低下する(→減損処理が必要になる)ことがあり得るということで、この点は注意が必要です。

最後に

最後にちょっとだけ余談ですが、仕事をしていて思うのは、買収時の価値算定のベースとなる事業計画がいかに甘いか、ということです。

まあ、減損処理の要否を判定する局面で見る計画(=達成できなかった計画)だから、余計に薔薇色度合いにウンザリするんだと思いますが(もう「シナジー」という用語は見たくない)。

そして、それを監査対応のために見直して、計画からの乖離状況に関する合理的な説明を準備するのは、不毛レベルでいっても最高峰だと思います。

では、今週も頑張っていきましょう!

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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