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佐和周のブログ

移転価格税制の基礎

第20回 TNMMにおける運転資本に係る差異調整

だいぶ前になりますが、独立価格比準法のところで、差異調整についてお伝えしました(以下の記事です)。

第6回 移転価格税制における「差異調整」をわかりやすくいうと

比較可能性分析をしているときに、「比較対象取引としてOKそうだけど、ちょっとだけ違うんだよな」というときに考えるテーマでしたね。

改めて差異調整について確認

「差異調整」とか「差異の調整」とか呼びますが、これは文字どおり、独立企業間価格の算定にあたって、国外関連取引と比較対象取引との差異について調整を行うことを意味します。

具体的な差異調整の方法は、上記の記事で、事務運営指針に挙げられている以下の4つの例を確認しました。

(1) 貿易条件の差異調整
(2) 決済条件の差異調整
(3) 値引き・割戻し等の差異調整
(4) 機能またはリスクに係る差異調整

TNMMにおける差異調整

今回は、取引単位営業利益法における差異調整について考えてみます。

差異調整を行う対象

まず、前提として、差異調整を行う対象は、比較対象取引の選定過程を経たものです。

例えば、通常、取引段階(卸売か小売かなど)に差異のある法人は、業種分類コードにより比較対象取引(の候補)から除外されます。同じく、取引規模に差異のある法人は、定量的基準(売上基準など)により比較対象取引から除外されます。つまり、これらはそもそも差異調整の対象とはならないということです。

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ちょっとわかりにくい運転資本に係る差異の調整

上記では、4つの差異調整の方法の例を挙げましたが、 これ以外にTNMMに関わるものとして、運転資本に係る差異の調整があります(参考事例集にも例示されています)。

具体的には、国外関連取引と比較対象取引との間で運転資本の水準に差異がある場合には、その差異により生じる利益指標の差を調整するということです。

うーん。わかりづらいですよね。私も遠い昔、移転価格文書を見て、「何でこんなことやるんだろう?」と思った記憶があります。

運転資本とは

まず、運転資本とは、一般的に、企業の経常的用途のために投下され、短期間に回収される流動的な資本のことをいいます。

「運転資本=売掛金+棚卸資産-買掛金」みたいな単純な算式もありますが、売掛金や買掛金の残高、棚卸資産の保有高の水準によって増減するものと考えてください。

この運転資本の多寡は、企業の資金繰りや余剰資金による投資の規模に影響を及ぼします。ここまではいいと思います。

運転資本の水準が利益指標に与える影響

でも、差異調整するということは、運転資本の水準が、結果として利益指標等の算定に影響を及ぼす可能性があるということです。「本当にそうか?」と思いますよね。

参考事例集では、この点について、以下の記載があります。

運転資本の差異が利益指標等の算定に影響を及ぼすかどうかは、必ずしも明確でない場合が多いことから、こうした調整は常時機械的に行うのではなく、当該差異が及ぼす影響について十分検討することに留意する

結構機械的にやってるような気もしないでもないですが…

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具体的な調整計算

それはそれとして、どうやって運転資本に係る差異を調整するかというと、考慮される勘定科目としては、例えば、売掛金や買掛金、棚卸資産などがあります。

で、これらの水準を見て、国外関連取引と非関連者間取引の間で異なっている場合、参考事例集では、以下のような調整計算をイメージしているようです(あくまでも例示ですが)。

運転資本の水準差を適切な基準で示される割合で測定する
②これに市場金利等の適切な運用利回りを乗じたものを利益指標等に加減算する

①については、例えば、「国外関連取引に係る運転資本÷検証対象の当事者の売上高」-「非関連者間取引に係る運転資本÷非関連者の売上高」で計算します。

金利調整であるような、そうでもないような。こんなんで利益水準が決まったら、何も苦労はないよなーとは思いますけど。まあ、そういう世界なんで。

あ、最後に、ポイント集(国税庁 「移転価格税制の適用におけるポイント」)では、検証対象法人及び比較対象となる法人の有価証券報告書、アニュアルレポート、ホームページ、業界情報などから両取引に差異があるかを確認し、検討を行うとしています。これはもういいですよね。

今日はここまでです。次回は英語のお話をして、その後、差異の調整における統計的手法の適用という、ちょっとややこしいお話を見ていきます。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

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