オススメの書籍紹介:『ROIC経営 実践編』
このブログでは、不定期でオススメの本をご紹介しています。
いま自分で本を書いているので、その本(コーポレート・ファイナンス関係の本)に参考文献として書く予定の本を挙げています。
Table of Contents
今回は『ROIC経営 実践編』です
今回は、『ROIC経営 実践編 事業ポートフォリオの組換えと企業価値向上』(KPMG FAS・あずさ監査法人 編)という本です。
昨日の『ROIC経営: 稼ぐ力の創造と戦略的対話』の続編的な本です。
ROICの使い方として、業績評価などで単に計算するだけではなく、「どうやって企業価値向上につなげていくか」みたいなテーマだと思います。
なので、事業別ROICであったり、それに基づく事業ポートフォリオの評価であったり、そういうプロセスのお話が結構あります。
章立ては、以下のような感じです。
第2章 事業ポートフォリオの評価方法
第3章 事業ポートフォリオの組換え
第4章 事業ポートフォリオ評価と投資余力の把握
第5章 事業ポートフォリオ評価と投資判断プロセス
第6章 事業ポートフォリオの経営管理体制
第7章 事業間シナジーの創出手順
事業再編ガイドラインを思い出す
前作よりは事業寄りの内容だと思います(財務寄りではないという意味)。
で、内容的には事業再編ガイドラインっぽいですが、内容はかなり実務的です(「実践編」なので、当たり前ですけど)。
例えば、事業別ROICの算定にあたり、「事業別に配賦すべきかそれとも本社勘定とすべきか判断が分かれるBS項目」ということで、以下の①~➈について整理されています。
➁有価証券、投資有価証券
➂のれん
➃オペレーティングリース
➄建設仮勘定
➅繰延税金資産・負債
➆退職給付資産・債務
➇研究開発費
➈有利子負債・自己資本
運転資本の構成要素以外では、通常見るのは資産サイド中心だと思いますが、ちょっと負債も含めつつ、こういうふうに整理してもらえると、スッキリするなあと思います。
めちゃくちゃ納得する
あと、めちゃくちゃ納得する記述が随所にあります。
あんまり書くと営業妨害になるので、1つだけ例を挙げると、以下のような感じです(第5章の「事業ポートフォリオ評価と投資判断プロセス」のお話です)。
「投資採算性」では、NPV、IRR、Pay-back等を算定し、投資判断基準に照らして投資の「Go/No Go」を確定する。投資基準は定量的に算定されるため、客観性を担保することができる。ここで厳に慎むべきは、この段階で定性的な判断基準を持ち出すことである。
(下線は追加)
これなー。ほんとそうですよね。
「持ち出す」という表現が、現場感覚満載でちょっと笑いました。コーポレート部門の方だと、一度は「厳に慎め!」みたいに言ってみたいだろうなあと思います。
あと、「Go/No Go」を確定する、みたい表現、カッコいいですよね。確かに、私もgo/no-goという表現は使います。海外の人とやり取りするときだけですけど。Pay-backのbackもæを強めに発音するんだろうなあ。
前作に比べると、個人的には仕事内容には直結しづらい面がありますが(事業ポートフォリオの見直しなんかを大っぴらに話すのは苦手なので)、それでも勉強になった部分は多かったです。なので、企業の方だったら、もっと共感できる部分が多いはずです。
この本を参考に、自分の本もカタカナ多めにしよう。カッコいいから。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。