インボイス制度:賃貸借処理の所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る適格請求書の保存
今週は、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のことを書いてます。
2023年4月に国税庁の「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が改訂されたので(詳細はこちら)、そこで新たに追加された項目について。
今回のテーマは、賃貸借処理の所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る適格請求書の保存です。
Table of Contents
1. 前提となる知識
昨日の続きで、ファイナンス・リース取引のお話です。
繰り返しになりますが、法人税法上で売買があったものとされるリース取引については、消費税法上も、そのリース取引の目的となる資産の引渡しの時に資産の譲渡があったものとして取り扱われます。
そして、賃借人の側では、リース資産の取得時に、リース料総額を仕入税額控除の対象とする処理が原則になるものの(いわゆる「一括控除」)、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、例外的に支払リース料をその都度仕入税額控除の対象とする処理も認められます(いわゆる「分割控除」)。
今日は、この分割控除を行う場合のインボイスの保存がテーマです。
2. 問題の所在
Q&Aにはリースに関するQが追加されており、具体的な内容としては、以下のとおりです(一部省略してます)。
所有権移転外ファイナンス・リース取引…につき賃借人が賃貸借処理し、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース譲渡時に交付を受ける適格請求書の保存により仕入税額控除の適用を受けることができますか。
昨日も書いたとおり、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡時に適格請求書の交付義務が生じるので、「インボイスの交付を受けるタイミングと仕入税額控除のタイミングが合わない」という問題意識だと思います。
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3. リース資産の引渡時に交付を受けた適格請求書の保存でOK
このQに対するAの要約は以下のとおりです。
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引における適格請求書については、リース資産の引渡し時に当該リース取引の全額に対する適格請求書が交付される
- 所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃借人が賃貸借処理によりそのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース資産の引渡し時に交付を受けた適格請求書を保存することにより、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間ごとに計上した課税仕入れに係る仕入税額控除の適用要件を満たす
当然といえば当然ですが、「リース料の支払いごとにインボイスがなくてもOK」ってことですね。
4. 分割控除の場合の適格請求書の保存期間
Q&Aによると、この場合の適格請求書については、リース料の最終支払期日(所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃貸借処理により計上する最後の課税仕入れ)の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があるということです。
なるほど。
5. 令和5年10月1日前に行われた所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い
ちなみに、Q&Aには注書きがあって、令和5年10月1日前に行われた所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃借人が賃貸借処理(分割控除)を採用している場合、同日以後に賃貸借処理により計上する課税仕入れについては、インボイス制度は影響しない(区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受ける)という内容が記載されています。
これはすでに昨日書いた内容ですが、念のため。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。