芸能プロダクション(個人)に支払う出演料や斡旋料に係る源泉徴収(源泉所得税)
今週は、源泉所得税のことを書いています。
普段のお仕事で取り扱っている非居住者等への支払いに関するものじゃなくて、シンプルに国内のお話(居住者への支払い)で、今回は、芸能プロダクション(個人)に支払う出演料や斡旋料に係る源泉徴収について。
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芸能プロダクションに対する支払いのパターン
通達では、個人事業主が「芸能人の役務の提供をした場合」または「芸能人の役務の提供の斡旋をした場合」の報酬・料金に係る源泉徴収の要否(所得税の課税関係)について、3つのパターンに分けて取扱いが示されています。
ちょっと設定は変えますが、芸能人の役務の提供を受けて、報酬・料金を支払う自社(出演先)の立場で考えると、だいたい以下のようなパターンに分類できます。
2. 芸能人のみに出演料等を支払う場合
3. 芸能人に出演料、プロダクション(個人)に斡旋料を支払う場合
1. 芸能プロダクション(個人)のみに出演料等を支払う場合
1つ目のパターンは、芸能プロダクション(個人)に出演料等をまとめて支払うケースで、具体的には以下のとおりです。
- 芸能プロダクション(個人)と芸能人の斡旋契約を締結する
- 芸能人(出演者)とは出演契約を締結しない
- 報酬・料金は芸能プロダクションに支払う(注)
(注)出演者に対しては、芸能プロダクション(個人)から出演料が支払われる
この場合、芸能プロダクション(居住者である個人)に支払う出演料等について、源泉徴収は必要でしょうか?
答えは… 「芸能人の役務の提供を内容とする事業に係るその役務の提供に関する報酬・料金」として、源泉徴収が必要です。
ただし、プロダクションが、「源泉徴収免除証明書」を提示したときは、例外的に源泉徴収は不要になります。
(1) 源泉徴収税額
源泉徴収を行う場合、源泉徴収税額には二段階税率が適用され、支払金額(源泉徴収の対象となる金額)が100万円以下の部分は10.21%、100万円超の部分は20.42%です。
なお、消費税等の取扱いについては、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において、消費税等が明確に区分されている場合には、本体部分(報酬の額)のみを源泉徴収の対象とすることができます。
(2) 芸能プロダクションから出演者への出演料の支払い
ちなみに、自社には関係のない話ですが、芸能プロダクションが出演者に出演料を支払うときも、源泉徴収されているんじゃないかと思います。
2. 芸能人のみに出演料等を支払う場合
2つ目のパターンは、逆に芸能人に出演料等をまとめて支払うケースで、具体的には以下のとおりです。
- 芸能プロダクション(個人)とは芸能人の斡旋契約を締結しない
- 芸能人(出演者)と出演契約を締結する
- 報酬・料金は出演者に支払う(注)
(注)芸能プロダクション(個人)に対しては、出演者から斡旋料が支払われる
この場合、芸能人(居住者である個人)に支払う出演料について、源泉徴収は必要でしょうか?
答えは… 源泉徴収を行う必要があります(詳細はこちら)。
ちなみに、自社には関係のない話ですが、出演者が芸能プロダクション(個人)に対して支払う出演のあっせん等の報酬・料金については、源泉徴収していないんじゃないかと思います。
3. 芸能人に出演料、プロダクション(個人)に斡旋料を支払う場合
3つ目のパターンは、支払いを分けるケースで、具体的には以下のとおりです。
- 芸能プロダクション(個人)と芸能人の斡旋契約を締結する
- 芸能人(出演者)と出演契約を締結する
- 報酬・料金は芸能プロダクションと出演者それぞれに支払う
この場合、芸能人(居住者である個人)に支払う出演料については、源泉徴収が必要です。
また、芸能プロダクション(個人)に支払う斡旋料についても、同様に源泉徴収が必要です。ただし、プロダクションが、「源泉徴収免除証明書」を提示したときは、例外的に源泉徴収は不要になります。
4. 実際には
私はこの業界はあまり詳しくないですが、何となく契約書が適当なことが多い印象があります。
契約書からは「誰がどの立場でどのような役務提供をするのか」がちゃんと読み取れなかったりするので、源泉徴収の要否はよく考えたほうがいいかもしれません。まあ、だいたいは源泉徴収が必要ですけど。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。