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内部統制基準・実施基準の改訂(公開草案):主な改訂項目

今年は内部統制のことを書くと決めたので、覚悟を決めて少しだけ。

今回は、先月、企業会計審議会の内部統制部会が公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」の全体像について。

まだ公開草案ベースですけど、内部統制基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準)の構成に沿って、改訂があった項目に限定して見ていきたいと思います。

 

1. 内部統制の基本的枠組み

「Ⅰ.内部統制の基本的枠組み」のセクションで改訂があった項目は以下のとおりです。

① 報告の信頼性
② 内部統制の基本的要素
③ 経営者による内部統制の無効化
④ 内部統制に関係を有する者の役割と責任
⑤ 内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理

このあたりは内部統制が好きな方向けだと思います。

2. 財務報告に係る内部統制の評価及び報告

次に「Ⅱ.財務報告に係る内部統制の評価及び報告」のセクションで改訂があった項目は以下のとおりです。

① 経営者による内部統制の評価範囲の決定
② ITを利用した内部統制の評価
③ 財務報告に係る内部統制の報告

上記のうち、①が一番実務に影響しそうだった部分です。当初は、評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する指標について、数値基準(「売上高等の概ね2/3」等の例示)の廃止が検討されていたので。が、結局は(少なくとも当面は)残ったので、あまり変わらないのかもしれません。

ただ、それ以外でも、評価範囲に含まれない期間の長さを考慮するとか、開示すべき重要な不備が識別された場合の取扱い(その時点を含む会計期間の評価範囲に含める)とか、結構内容が追加されています。評価範囲に関する監査人との協議についても。

③は内部統制報告書の記載内容が拡充されています。

具体的には、新たに「経営者による内部統制の評価の範囲について、重要な事業拠点の選定において利用した指標の一定割合等の決定の判断事由等」について記載すべきこととされています。上記①の関係ですね。

また、「前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合におけるその不備に対する是正状況」を付記事項に記載すべきこととされています。このあたりも実務には一定の影響があるのかもしれません(知らんけど)。

なお、②は当然ながらノーコメントです。

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3. 財務報告に係る内部統制の監査

「Ⅲ.財務報告に係る内部統制の監査」のセクションについては、当初はダイレクト・レポーティング(監査人が内部統制そのものの有効性について意見を表明する方法)が導入されるかもという話だったのですが、結局はあまり変わっていないように見えます。

全般的に、監査人に対して、経営者との協議を促す感じでしょうか。

上記2.の内部統制の評価範囲の話とかもそうですが、あとは、監査人が財務諸表監査の過程で、経営者による内部統制評価の範囲「外」から内部統制の不備を識別した場合、内部統制報告制度における内部統制の評価範囲及び評価に及ぼす影響を十分に考慮するとともに、必要に応じて、経営者と協議することが適切とされています。

4. 内部統制基準・実施基準以外の改訂項目(内部統制報告書の訂正時の対応)

もう1つ、内部統制基準・実施基準「以外」の改訂項目として、事後的に内部統制の有効性の評価を訂正する際、訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由等の開示が必要になります。

公開草案には、「関係法令について所要の整備を行うことが適当」とあるので、内閣府令が改正されるんでしょうか。

背景としては、近年、「開示すべき重要な不備が内部統制報告書の訂正によって報告される事例」や「経営者による内部統制の評価範囲外から当該不備が識別される事例」が見られるということがあるようです。

現行制度上、訂正内部統制報告書においては、不備が当初の内部統制報告書において報告されなかった理由やその不備の是正状況等についての記載は求められていないので、これはそれなりの影響がありそうです。

途中経過では「訂正内部統制報告書についても監査を求める」みたいな話があったように思うので、それと比べると大したことないのかもしれませんが。

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5. 適用時期等

改訂基準及び改訂実施基準は、2024年4月1日以後開始事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用することとされています。

楽しみですね(他人事)。

今日はここまでです。

では、では。

この記事を書いたのは…
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら

 

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