オススメの書籍紹介:『出向・転籍の税務』
このブログでは、不定期でオススメの本をご紹介しています。
最近は、読書の秋ということで、「昔読んだ本」の改訂版(最新版)を読んでいます。
「昔」というのは、税理士法人に転籍したときです。監査法人にいたときは、会計の本なんかほとんど読まなかったのに、税理士法人に移ってから、めちゃくちゃ本を読みました。単純に仕事の性質の違いですけど。
当時頻繁に参照していた本は、今でも改訂が続いていることが多いので、やっぱり名著だったんだなと思います。
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今回は『出向・転籍の税務』です
今回は、そういう本の中から『出向・転籍の税務』(戸島 利夫(さん) 編)という本をご紹介します。五訂版です。
出向と言えば、(私の中では)戸島先生です。
グループ会社が多い企業向け
私のクライアントは大企業が多いので、国内でも海外でも関係会社が多くあり、そうすると必然的に会社間で人の行き来が発生します。
通常の国内・海外子会社への出向に始まり、「いったい何社兼務されているんですか?」という兼務、「え?いま精算するんですか?」という出向者の退職給与の分担方法、「役員に較差補填って概念あったっけ?」みたいな役員報酬の負担関係、言いだすとキリがないです。
そんなとき、「ああ、これはこのパターンだな」と整理できるようになった(ただし、常識的なものに限る)のは、この本のおかげです。
例えば、<出向者に対する給与の直接支給と間接支給>というところでは、「負担の形態」(出向先全額負担・出向元全額負担・分担)と「支給の形態」(出向先支給・出向元支給・それぞれ支給)の組合せで整理されています。
私がメインで使っていた(使っている)のは、法人税の部分ですが、出向や転籍をめぐる源泉所得税の基本的な取扱いもカバーされています(その他消費税も)。
なので、大企業で私と同じ悩みを抱えておられる方々やそういう企業をサポートされている専門家の方々にオススメです。
興味深い項目
久々に読んで、やっぱり面白いなあと思ったのは、以下のような項目です(中身までは書きません)。
…差額が経営指導料とか技術指導料になるかどうか、みたいな話です
…海外の話が書いてあるわけじゃないですが、税務調査で国外関連者に対する寄附金に関して議論する際に主張すべき内容が書いてあります
…出向者が、出向先にいながら、出向元法人の立場で業務に従事する場合の取扱いなどです
興味深い質疑応答(設例)
あとは、質疑応答もあって、興味深かったのは以下の項目(設例)です。
まあ、一番の衝撃は「退職給与負担金を手形で支払った場合」という質疑応答です。出向者に手形で直接支給かと思ったのですが、会社間精算だったので、衝撃度は実際より低いですけど。
ちなみに、上記は法人税に関する設例ですが、源泉所得税に関する設例もあります。
最後に
その他、出向規程や出向契約書のひな型っぽいものもあって、改めていい本だなあと思いました。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。