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佐和周のブログ

移転価格税制の基礎

第9回 ローカルファイルの記載事項と記載例:市場の状況

ちょっと間が空きましたが、第8回 移転価格税制における「市場の状況」とは?(比較を行うための諸要素)では、比較を行うための諸要素のうち、「市場の状況」というものの内容を確認しました。

 

ローカルファイルに含まれる書類

この点について、ローカルファイルには、「国外関連取引に係る資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引に係る市場に関する分析などを記載した書類」が含まれます。

そして、その分析には、市場の特性が国外関連取引に係る対価の額または損益の額に与える影響に関する分析が含まれます。

うーん、全く頭に入ってこない。

「市場の状況」をもうちょっと具体的に

具体的にどんなことを書くかというと、まずは国外関連取引の対象となっている商品や製品が販売されている地理的市場を特定します。

その上で、その市場の概要及びその市場の特有の状況が国外関連取引に係る対価の額や損益の額に与える影響を記載する必要があります。

併せて、国外関連取引の当事者がどの取引段階に属するのか(小売または卸売、一次問屋または二次問屋の別)も明らかにする必要があります。この点は、前回ちょっとお伝えしましたよね。

ローカルファイルの記載事項(必要な情報)

この点について、例示集(国税庁 「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成に当たっての例示集」)では、必要な情報の例として、以下が挙げられています。

・国外関連取引の対象となる商品若しくは製品が販売されているまたは役務が提供される地理的市場に係る情報
…例えば、商品、製品または役務の需要、市場規模、地理的に特有な事情(例:人件費水準、市場価格の水準、需要の変動、顧客の嗜好)、許認可の状況

・市場における競争の概要
…例えば、法人グループ及び競合他社のシェア、競合他社の名称・市場における政府の政策(例:関税の優遇)の内容、当該政策が国外関連取引に係る対価の額または損益の額に与える影響

・国外関連取引に係る対価の額または損益の額に影響を与える為替の変動状況

・その他国外関連取引に係る対価の額または損益の額に影響を与える市場の要因に係る情報

・影響額(計算している場合)

これで書くべき内容がイメージできる方は相当な理解力です。

超人でない方は、ここは流して頂いて、一番下の「ローカルファイルの記載例(作成サンプル)」をご覧頂くのがいいと思います。

必要な書類

そして、例示集においては、準備する書類として、以下が挙げられています。

・有価証券報告書
・年次報告書(アニュアルレポート)
・市場分析資料(営業用等に社内で作成したものや外部専門家に依頼したもの)
・市販の市場分析資料などの参考文献の写し
・国外関連者の所在する国または地域において適用される優遇税制の概要
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ローカルファイルの記載例(作成サンプル)

さらに具体的に見ていくと、作成サンプル(国税庁 「同時文書化対応ガイド ~ローカルファイルの作成サンプル~」)では、以下のような記載があるので引用します(A社というのが国外関連者です)。

市場等に関する分析
⑴ A国市場に関する分析
イ A国の経済情勢の概況

 A国は、2017年に国内総生産(GDP)の実質成長率が○%を記録するなど、世界的な不況からの回復が続いていると考えられますが、近年の回復傾向は不安定であると考えられます(GDPの実質成長率は、2015年が○%、2016年が○%)。
 また、2017年第4四半期は、○国における災害や○国における景気後退など、A国経済にマイナス要因となる出来事が続いたため、A国内での設備投資や輸出が停滞しました。

ロ A国内における主要な自動車メーカーの動向
 自動車部品供給業者の業績は、顧客である自動車メーカーの業績の影響を強く受けますので、A国内の自動車メーカーについて、次のとおり分析しています。
 自動車メーカーの業界は、世界的不況の影響を受けた業界といえますが、その中で、特にA国内の主要自動車メーカーは、売上高の減少や多額損失の計上など、大きな影響を受けたといえます。これらの影響は、現在では一定の改善を見せるまでに至っており、2017年におけるA国内の主要自動車メーカーの新車販売台数は、世界的不況の直前の水準の約○%にあたる○万台まで回復しています。
 また、A国内の主要自動車メーカーにおける平均設備稼働率は、2009年に最低稼働率○%を記録した後、回復傾向にあり、2017年では○%を示しています。この平均設備稼働率の上昇は、新車の販売台数の上昇に繋がり、結果として主要自動車メーカーの収益性の回復に繋がっているといえます。
 さらに、A国内の日系自動車メーカーにとっては、為替の大幅な変動も業績に大きな影響を与えたといえます。特に、2017年第1四半期における大幅な円安は、業績に大きなプラスの影響を与えており、今後、日系自動車メーカーがA国に拠点を設立する方針にも影響があるのではないかと考えられます。
 なお、日本では1つの潮流となっている、代替エネルギーを使った次世代型自動車の普及については、A国内では、それほど大きな潮流とはなっていないため、あくまでも長期的なトレンドであると認識しています。主要自動車メーカーのA国内におけるシェア及び販売台数は以下のとおりです。
(中略)
ハ 2017年における自動車部品供給業者の動向
 自動車部品供給業者の業績が、自動車メーカーの業績と連動することについては、上記ロで説明しているところですが、顧客である主要自動車メーカーの業績が好調だったため、自動車部品供給業者の業績も、全般的に好調であったといえます。2017年の自動車部品供給業者業界の利益率は売上高総利益率約○%、売上高営業利益率約○%であり、市場規模は○億ドルです。
 A社と類似の主要自動車部品供給業者のA国内における売上高は次のとおりです。
(中略)
添付資料23 市場分析レポート(○出版)

⑵ その他の分析
 A国における地理的に特有な事情、許認可、政府の政策が、各国外関連取引の損益等に与える影響は、次の点を除いて他にありません。
イ A社が適用している優遇税制
(中略)
ロ 為替の影響

添付資料24 当社の2017年度決算説明会資料「為替の影響」

「市場の状況」というと漠然としていますが、この作成サンプルをざっとご覧頂くと、イメージがわきやすいと思います。

だいたいこんな感じで書けばいいってことですね。

今日はここまでです。次回は、比較を行うための諸要素の最後、事業戦略について確認します。

では、では。

■移転価格税制に関するトピックの一覧はこちら

 

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