「市場価格のない株式等」は時価算定が可能でも取得原価で?
今日も会計のことを書きます。
金融商品会計基準と時価算定会計基準における市場価格のない株式等の取扱いについて。
Table of Contents
1. 旧金融商品会計基準における「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」
旧金融商品会計基準には、「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」という区分がありました。
社債等以外は、取得原価でしたよね。
2. 「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」はもうない
一方で、時価算定会計基準における時価の考え方の下では、「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」は存在しなくなります。
これは、「観察可能なインプット」を入手できなくても、入手できる最良の情報に基づく「観察できないインプット」を用いて時価を算定することが求められるためです。
これ自体は理解できます。
時価(あるいは時価算定)の考え方を変えたので、「時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券」が存在しなくなったということですね。
3. なのに「市場価格のない株式等」はまだある
よくわからないのは、にもかかわらず、「市場価格のない株式等」という謎の区分が残っていることです。
市場価格のない株式等についても、上記の時価の考え方に基づけば、「時価」は算定できるはずです(定義から「市場価格」はありませんが)。
しかしながら、市場価格のない株式等については、従来どおり取得原価をもって貸借対照表価額とされます。
「たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしない」とする従来の考え方を踏襲するそうです。
何で?
理屈の面だけIFRS13に寄せていった結果、ぐちゃぐちゃになった感じなんでしょうか(結論は別にそれでいいとしても)。
誰かすべてを論理的に説明できる人がいたら教えてください。
今日はここまでです。
では、では。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。