電子取引に係る宥恕措置における「やむを得ない事情」とは
欲しかった情報が出ました。
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0. この記事のポイント
1. 与党大綱の内容(電子取引に係る宥恕措置)
与党大綱では、電子取引について宥恕措置が示されました(詳細はこちら)。
具体的な措置の内容は以下のとおりです。
「やむを得ない事情」が必要ですが、「令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間」は、「出力書面」でOKなので、2年の猶予という感じです。
2. 「やむを得ない事情」とは
問題は「やむを得ない事情」が具体的にどういうものかということでした。
これについて、税務通信が取材してくれました(3684号)。さすが。
端的には、以下のように、企業の状況において対応が困難だったというのであれば、基本的には「やむを得ない事情」があるものとして取り扱われる(措置の対象になる)みたいです。
今月下旬に公表される省令等改正で手当てされる予定ということで。
また、以下のように、誰かに言ってほしかったこと(通常の宥恕規定との違い)も、ちゃんと書いてくれています。
事業者の現状に配慮して設けられた背景から、災害等による一般的な宥恕措置としてイメージする限定的な措置ではなく、相応に間口が広い措置になるとみられる
3. 結論
結論としては、皆さんが予想されていた通りの運用になりそうですね。
その他、税務通信の記事では「書面と電子データの混在ケース」にも触れてくれているので、正確なところは税務通信をご覧ください。
今週は打ち合わせでこのことばかり話していた気がします。
記者さん、ありがとうございました。これで年を越せます。
4. 取扱通達への反映(2021年12月追記)
まだ年は越していないのですが、この内容が施行規則(詳細はこちら)や電子帳簿保存法取扱通達に反映されました。
取扱通達のほうの要点としては、以下のような感じです。
「やむを得ない事情」とは、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に係るシステム等や社内でのワークフローの整備未済等、保存要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難であることをいう。
しかも、趣旨説明では、以下のようにもう少し踏み込んでいます。
例えば、その電磁的記録の保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難な事情がある場合については、この宥恕措置における「やむを得ない事情」があると認められることに留意する。
「自己の責めに帰さないとは言い難いような事情」って(笑)
言い換えると、「自己の責めに帰すべき事情」ということで、それでもセーフなので、要は「何でもあり」ってことですね。
一応は(?)法律で決めたことなのに、ここまでひっくり返すのは新鮮ですね。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。