親会社監査役による海外子会社往査
今月は、日本監査役協会さんのセミナーがあるので(詳細はこちら)、少しの間、監査役監査のことを書いてます(お断りなどはこちら)。
今回は、海外子会社往査について、さっぱり書きたいと思います。
Table of Contents
1. 海外子会社往査の位置付け
親会社の監査役としては、子会社を含む企業集団の内部統制システムがちゃんと整備されているかどうかを確認する必要がありますが、その対象には海外子会社も含まれます。
国内子会社については、子会社の監査役と連携も取れるので、この点はそれほど難しくありませんが、海外子会社については、様々な面で障害があります。
私も海外子会社往査に同行させて頂くことがあるのですが、往査を受け入れる海外子会社の側の会社法って、どうなってるのかな? 制限はないのかな? といつも思います(あくまでも他社の監査役なので)。突き詰めたことはないんですけど(笑)
もちろん、現実には、会計監査人や内部監査部門と調整しながら、ローテーションで往査するのが一般的だと思います。
最近は、海外出張が難しいので、リモート監査が主流だと思いますが、いずれにせよ、言語の問題もあって、とにかく情報が取りづらいですよね。
2. 親会社内で入手可能な海外子会社の情報
私が親会社の監査役さんにいつもお伝えしているのは、「海外子会社の情報については、親会社内の各部署に分散しているので、子会社から直接入手するより、そこから入手するのが楽ですよ」ということです。
私が関係している分野についていえば、子会社管理部門のほか、会計に関する情報は経理部門の連結担当、税務に関する情報は税務部門(経理部門)の国際税務担当や移転価格税制担当の方々がかなりの量を持っておられるはずです。また、財務部門も、海外子会社の資金繰りなんかは見てるんじゃないでしょうか。
問題は、そういった情報があまり集約されていないということです。なので、監査役さんが、そういった資料の全体に目を通されるのはすごくいいことだと思います。
もちろん、内部監査部門や会計監査人からも情報は取れるはずです。
特に、有価証券報告書を提出する大会社の場合、会計監査人は連結計算書類も監査していて、そこには海外子会社の数字も含まれます。なので、一応、会計監査の面では、監査役はその相当性を判断する立場ということにはなります(実際には、会計監査人が海外子会社のことを分かっているかどうかは疑問ですけど)。
3. 現地法令の理解
海外子会社の場合、言語の問題などもあるのですが、やっぱりしんどいのは現地法令の理解でしょうか。
例えば、親会社の監査役にとって、海外子会社の贈賄リスクや競争法抵触リスクなどは、必須の確認事項になります。
これらについては、もちろんグループとしてのポリシーはあるはずです。また、現地ではコンプライアンスのトレーニングなんかも実施されていると思うので、そういう外形的なところを理解するのは難しくないと思います。
ただ、「何がリスクか」や「定量化されたリスクはどの程度の影響なのか」を含めて、海外子会社の実情を理解するためには、やっぱり現地法令自体をある程度理解しておくのが望ましいですよね。このあたりは、法務部門の協力が必要だと思います。
4. 個人的な希望
技術的なところではこのあたりですが、個人的な希望としては、親会社の監査役さんには、海外子会社のマネジメントの方々とゆっくり話して頂きたいなと思います。
やっぱり、内部統制システムの整備なんかも含めて、親会社のポリシーみたいなものは、しかるべき立場の人が伝えないと、なかなか響かないので。
監査役さんと一緒に出張すると、海外子会社の現地マネジメントや現地スタッフは、「監査役が何か」というのはちゃんと理解できていない気がしますが(笑)、監査役が偉い人だというのは、ちゃんと伝わっている気がします。
あとは、駐在員の人の愚痴も聞いてあげるのも、大切な役割ですね。
今日はここまでです。
では、では。
↓監査役監査に関するオススメの書籍です(私の本ではないです。軽い紹介記事はこちら)。
佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。