インボイス制度:制度開始前に適格請求書発行事業者の登録を取り下げる場合
久しぶりに、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)のお話です。
少し前ですが、国税庁は2023年7月、「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」を公表しました。
今日は、そのうち「インボイス制度開始前にインボイス発行事業者の登録を取り下げるケース」という項目について。
Table of Contents
1. 制度開始前に適格請求書発行事業者の登録を取り下げる場合
この事例集においては、制度開始前に適格請求書発行事業者の登録を取り下げる場合の手続きが明確化されています。
具体的には、制度開始日である令和5年10月1日を登録日としていた場合で、登録日前に登録を取り下げたいときには、その前日(9月30日)までに取下書を提出する必要があるとされています。
2. 制度開始後の取下げは不可
逆にいうと、制度開始日である令和5年10月1日以後の取下げは不可ということです。
つまり、その場合は「取下げ」ではなく「取消し」の手続しかできないため、少なくとも令和5年10月1日~課税期間末日までの課税資産の譲渡等について、インボイスの交付義務・保存義務・消費税の申告義務が生じます。
これは危険な匂いがしますね。
ちなみに、税務通信(3764号)には、以下の追加情報があります。
- 郵送の場合は、発信主義ではなく、到達主義を採用している(➡ 令和5年9月30日は土曜日なので、9月29日必着)
- 取下書は、法令等で書式が定められていないため、事業者が用意した書類等に、必要事項を記載した上で、インボイス登録センターに提出すればよい
3. 制度開始後に取下書を使うケース
事例集では、インボイス制度開始後において、登録申請書を提出してから登録日までに登録を取り下げたい場合にも、取下書にて対応すべきこととされています。
その他、事例集には別のテーマとして、適格請求書発行事業者の諸手続や2割特例のことなども言及があるので、現物をご覧になってもよいかもしれません。
今日はここまでです。
では、では。
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佐和 周(公認会計士・税理士)
現 有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人を経て、佐和公認会計士事務所を開設。専門は海外子会社管理・財務DD・国際税務など。東京大学経済学部卒業、英国ケンブリッジ大学経営大学院(Cambridge Judge Business School) 首席修了 (MBA)。詳細なプロフィールはこちら。